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第二十九話 妹の通学に護衛馬車隊!? お兄様たちの“過保護輸送作戦”が始動しました!?

翌朝。


いつも通り登校しようとしたアリアは、屋敷の玄関で目を疑った。


「……なに、これ?」


目の前には、まるで王族でも乗るかのような特注の豪華馬車が停まっていた。屋根にはレイフォード家の紋章、側面には薔薇と鳳凰の細工、さらには護衛用の騎士たちがずらりと並んでいる。


「本日より、アリア様の通学は“特別警備仕様馬車”にて行います」


屋敷付きの執事が、平然と告げた。


「……ちょっと!? 私、徒歩で行くって言ったよね!?」


その声に反応するように、レオンとノアが姿を現す。


「徒歩は危険だ」

「途中で何があるかわからない。昨日みたいに、また誰かが手紙を置いていたらどうする?」


「それは……嬉しかったけど……でも! 大げさすぎるよ!」


アリアが抗議するも、兄たちの過保護魂は既にヒートアップしていた。


「この馬車には防音結界、魔力検知、温度調整、非常脱出装置付きだ」

「車輪には魔獣よけの加護が施されていて、万が一に備えて転移魔法の紋章も刻んである」


「そこまで!?」


アリアは馬車の扉を半開きにして中を覗いた。

中にはふかふかのシートに、読書用ランプ、茶葉の香りのするアロマ、そしてアリア専用のぬいぐるみたちが並んでいる。


「これ……わたしの部屋より居心地いいかも……」


うっかり心が揺らぐが、踏みとどまる。


「でも、学園の前にこんなの乗りつけたら目立っちゃうじゃない! やめてよぉ……」


その言葉に、兄たちは表情を曇らせた。


「アリア……君の安全が第一なんだ」

「僕たちが守らなくて、誰が守るっていうんだ……!」


じっと見つめられて、アリアは根負けした。


「……じゃあ、今日は特別に乗るけど。明日からは、普通のにしてね?」


「もちろん!」


にっこり笑う兄たち。しかしその笑顔の裏で、別の案が練られていることを、アリアはまだ知らなかった。




そして数日後。


リリアナ先生は職員室で嘆いていた。


「……また来ました、レイフォード家の馬車隊……」


校門の前には、何台もの馬車が並び、騎士たちが行儀よく整列していた。騎士団の中には、アリアの兄であるレオンとノアの姿もある。


「今日はどちらが“お迎え担当”なのかしら」


「本日は私、ノアが担当いたします」


「私は予備の補佐です」


レオンが補足するように答えた。


「補佐って何……」


リリアナ先生はため息をついた。生徒会からも、教師会議からも、度を越した過保護に対して注意が出ている。


「本気で注意しないと、本当に馬鹿にされるのよ……この学園が」


そう思っていると、ちょうどアリアが教室から出てきた。


「お兄様たち……! もうやめてって言ったのにーっ!」


アリアの叫びが、校庭中に響き渡った。


その後、正式に“過保護対応”としてレイフォード家に対して書面が提出されることとなったが、兄たちはその内容にこう答えた。


「“過保護”ではない。“正当防衛”である」


「愛とは行動だ」


こうして、アリアの平穏な通学は――今日も遠のいていくのであった。



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