第二十五話 お母様の暴走!? ご婦人方のお茶会で兄たちがまさかのおもちゃに!?
午後の柔らかな光が差し込むレイフォード邸の大広間。そこには豪華なシャンデリアの煌めきと、色とりどりの花が飾られたテーブルが並んでいた。
本日は、邸宅に招かれた近隣貴族のご婦人方による優雅なお茶会の開催日。レイナ夫人は華やかなドレスに身を包み、凛とした佇まいで来客を迎えていた。
「皆様、ご足労ありがとうございます。どうぞごゆっくりお過ごしくださいませ」
レイナの声には上品な響きがあり、場を一気に華やかな空気で満たす。しかし、その奥にはいつもながらの少々“暴走気味”の気配が漂っていた。
ご婦人方はレイナの見事なおもてなしに感嘆しつつも、やがて話題は自然とレイフォード家の若き兄妹へと移る。
「アリア嬢のお兄様方、いつもお見かけしますが本当に立派なご様子ねえ」
「ええ、ノア様の落ち着きとレオン様の明るさ、まさに理想の兄弟像ですわ」
と口々に称賛の声が上がる。
だが、ここからレイナ夫人の真骨頂が発揮される。
「ふふふ、それではお兄様方のお話を少し……」
レイナは軽やかに微笑みながら、秘密の暴露を始めた。
「先日もノアが、まるで守護騎士のようにアリアを守り通したのですが」
レイナの語り口に、ご婦人方の顔が興味津々に輝く。
「しかし、その熱心さが過ぎて、何と一晩中玄関前で見張りを続けたとか」
「まあまあ! それはまさに忠誠心の塊ですわね」
「ええ、ですがレオンはレオンで、アリアのために特製お菓子を焼き上げるも、味見役のご婦人方があっという間に平らげてしまい……」
「さすがレオン様、お料理上手ですものね!」
「そう、それに彼は甘いものに目がなく、つい自分でも味見のしすぎで苦しんだそうですの」
ご婦人方の笑い声が広間に響くなか、突然、ドアが豪快に開いた。
「おっと、ここはお茶会の最中だったか!」とレオンが慌てて入室。
続いてノアも少し困惑気味に現れる。
「失礼します……お茶会に乱入するつもりはないのですが、用事がありまして」
だが、ご婦人方はこの機に乗じて彼らを捕まえ、話題の中心に据えた。
「まあまあ、レオン様、ぜひこちらにお座りなさい」
「ノア様も、お茶とお菓子を召し上がっていただかなくては」
「このケーキは自家製でして、とても美味しいんですのよ」
ご婦人方の手際よく用意された茶菓子の前に、兄たちは押し出されるように着席させられた。
「い、いいんですか? 私たち……」と戸惑うノア。
「大丈夫よ、堅苦しいことは抜きにして楽しみましょう」とレイナが微笑む。
しかし、その笑顔の裏で兄たちは次々と“おもちゃ”にされていく。
ご婦人方は世間話の間に、
「ノア様は普段どのような訓練を?」
「レオン様はアリア嬢にどんなお菓子を?」
と質問攻め。
兄たちは真剣に答えるが、次第に疲れが見え隠れする。
そして、ふと気づくと、腕にフリルのついた可愛らしいレースの手袋をはめられていたり、勝手に髪の毛にリボンを結ばれたりと、すっかりご婦人方の“ペット”状態に。
「いやあ、これはなかなかに苦しい攻撃だ……」とノアが苦笑い。
「でも、アリアのためなら耐えられますよね!」とレオン。
一同大笑いの中、レイナは優雅にグラスを傾け、
「これもまた、愛情表現の一つですわ」と誇らしげに宣言。
夕暮れが近づく頃、兄たちはほどよく疲弊しつつも、普段とは違う新たな絆を感じていた。
レイナは満足げに椅子に深く腰掛け、
「また次回も楽しみましょうね」と微笑む。
ご婦人方も笑顔でうなずき、レイフォード邸の一日が賑やかに幕を閉じた。
兄たちがぐったりしつつも笑顔で戻ってくる様子を見て、アリアはそっと微笑んだ。
「お兄様たち、今日もありがとう。……私、やっぱりこの家族が大好き。」




