第二十二話 アリア、はじめてのお料理チャレンジ!? だけど兄たちが“味見”だけで大混乱!?
その日、アリアは――思い立った。
アリア:「(よし、今日こそ……“前世の私”の力、ちょっとだけ使ってみよう)」
そう、アリアには秘密があった。
この世界に生まれる前の記憶――かつて29歳のOLだった前世の記憶。料理アプリと時短レシピに命を救われた“キッチン戦士”だったあの頃。
アリア:「オムライス、だっけ……たまごをふわっとさせて、最後にくるっと包んで……♡」
【レイフォード邸・キッチン】
メイド長:「お、お嬢様が!? お料理を!? 一人で!?!?!?」
アリア:「えへへ……今日は、兄様たちに“ありがとう”の気持ちを伝えたくて」
メイド長:(この子、かわいすぎる……いっそ聖女なのでは……)
アリア:「(さて、炊き上がったご飯にケチャップとソースを混ぜて……チキンライス風にして……
バターで玉ねぎ炒めて、少しコンソメとお砂糖を足して……)」
魔導調理器「ピピッ、温度最適。現在、料理力ランク:特A」
メイド:「魔導調理器がこの家で初めて“特A”を出しましたわ……」
【ダイニング・その後】
アリア:「兄様たち、今日はわたしが晩ごはんを作りましたっ!」
ノア:「……妹が……料理を……!?(認識更新中)」
レオン:「えっ!? も、もしかして“魔導レシピ担当のメイドさん”と一緒に?」
アリア:「ううん、一人でやったよっ♡ じゃーん、今日は“オムライス”!」
レオン:「か、かわ……っじゃなくて、いただきまぁすっ♡♡♡♡♡」
ノア:「(少量をすくい、まず香り確認、そして――)……これは……ッ!!」
ノア:「絶妙な卵の火入れ、米と具材の一体感、塩分濃度、ソースの酸味と甘味のバランス……
まさか、アリアがここまでやるとは……(ぶつぶつ)」
レオン:「うまぁぁぁぁっ!! なにこれっ!? お口の中が妹の愛で爆発してるっ!!♡♡」
アリア:「ふふんっ♪ どう? おいしい?」
ノア:「ああ……これはもう、自立の第一歩として真剣に受け止めるべき――」
レオン:「いやああああああああああ!! アリアが大人になってくぅぅぅぅぅぅ!!」
ノア:「感情を爆発させるな。静かに受け止めろ。俺が崩れる」
【そこへ、重厚な足音が響く】
父:「――ふむ。なんだか良い香りがすると思えば……」
アリア:「あっ、お父様!」
レオン:「し、しまった! 父上の分、忘れてた……!」
アリア:「だ、大丈夫! いま追加で作るねっ!」
(数分後)
アリア:「えっと、たしか……おいしくなぁぁれ、萌え萌え……キューン♡」
父:「…………………」
父:「………………ぶふっ……ッ!! ぐはぁぁっ!?!?!」
ノア:「父上!?!?!」
レオン:「ちょっ!? 父上が! 父上が鼻血を……!?!?!?」
父:(小刻みに震えながら)「ア、アリア……この……この破壊力は……国家級……」
アリア:「へ、変な呪文だったかなぁ……?(しょんぼり)」
ノア:「いや、問題は呪文ではなく……演出だ」
レオン:「父上、しばらく正気に戻らない気がする……」
【夜】
アリア:「次はね、デザートに“プリン”をつくってみようと思うの♪」
ノア(カチャッ・魔導筆記具を取り出し):「必要な器具と材料、徹底サポート体制を整える」
レオン:「もうお兄ちゃんは全部の味見を担当する! 正座して待機する!!」
アリア:「お兄様たちの顔が真剣すぎて怖いよぉぉぉぉ!!」
【リリアナ先生・夜の職員室】
リリアナ先生(※学年主任兼担任):
「“レイフォード嬢の家庭調理技術が王城御用達レベル”との報告が……? いやいやいや……どんな初等部だここは……」




