第百六十八話 ミーナ、まさかの“兄ィズ側”に寝返る!?(後編)
――しかし、やっぱり騒動しか生まれない。
ノア・レオンと“秘密作戦会議”をすることになったミーナ。
場所は彼らが滞在している離宮裏の中庭。
もちろん、
メイド隊は柱の影・植え込み・屋根の上で100%見ている。
ミーナ(おずおず)
「……で、でも……わたし……兄ィズに協力したいですけど……
あの、その……どうしても帰国はしたいのですが……」
ノア(全力で頷く)
「よく言ったミーナ! 君は正直者だぞ!」
レオン「味方が一人増えるだけで希望が見えるな……!」
ミーナ(小声)
「でも……お二人とも、お行儀が悪いので……
見ていないと危ないというか……」
ノア・レオン
「結局お目付け役のままじゃん!!?」
アシュリー(屋根上)
「……ほう。ミーナさん、あっさり寝返った、と。」
リリア(植え込み)
「寝返りというか……三人とも“心の方向が一緒”というか……」
アネット(柱の影)
「つまり、“三人寄れば騒ぎのもと”……ってことですね」
カティア(低音)
「帰国願望で結託、ね」
三人「(ヒッ……)(絶対怒ってる……!!)」
ノア
「まずは離宮の外門を開ける方法だ。守衛がいて出られない」
ミーナ(こくこく)
「はい……わたし、知ってます……
“守衛さんはお昼に甘いものを食べると、三十分だけ眠くなる”……」
レオン
「なんでそんな個人情報を!?」
ミーナ
「……以前、お茶請けのケーキを運んだとき、
“甘い幸せは眠気を呼ぶ”って守衛さんが……」
ノア
「名言みたいに言うな!!」
しかし――
ミーナの天然情報が最強だった。
守衛は実際に午後、甘い物を食べると爆睡する。
ノア・レオン(小声でガッツポーズ)
「ミーナ天才か!?」
アシュリー
「……まずい。門番が寝るって情報、知らなかった……!」
リリア
「兄ィズ、ここまで来ちゃいましたよ……」
アネット
「このままだと、本当に脱走される……!!」
カティア(低音極まる)
「……止めます」
三人
「は、はいぃ!!(いつになく重い!!)」
門へ向かうノアたち。
ミーナは手に――なぜか「眠りを誘うハーブティー」。
レオン
「それ……渡したら絶対寝るやつじゃない?」
ミーナ
「……はい。わたし、帰りたいので……」
ノア
「ミーナ……君、味方にしたと思ったけど……
行動が完全に“優秀なお目付け役”なんだよ!!」
しかし、言っている間に――
守衛「……すぅ……すぴぃ……」
ノア・レオン
「もう寝てるぅぅぅ!!?」
ミーナ
「……あ、ケーキ食べてますね……」
パァンッ!!!(煙玉)
ノア「げほっ!? な、なんだ!?」
レオン「えっ、待って、これ奇襲!?」
ミーナ「し、視界が白いです……!」
そして白煙の中から――
メイド隊、全員、お嬢様護衛仕様の“戦闘モード”。
カティア(静かなる怒気)
「――残念ですが。
兄ィズの帰国は、“却下”です」
アシュリー
「止めます(物理で)」
リリア
「兄ィズ二人とミーナさん、確保します」
アネット
「逃げたら三倍の拘束術で止めます」
ノア
「メイド隊フル戦闘モードだと!? これ負けるやつ!?」
レオン
「ミーナの寝返り、完全に逆効果!!」
ミーナ
「ひゃあぁぁぁ!!?
あの……その……やっぱり寝返り撤回します!!」
カティア(微笑)
「遅いですわ」
――三人、見事に確保。
◆◆◆結末:アリアのお屋敷に速報が届く
メイベル
「お嬢様。緊急書簡です。“兄ィズ確保しました”とのことです」
アリア
「…………そう、でしたの。
……“また騒動を起こしましたので、しばらく監視強化します”……
……ノア兄様たち、本当に反省してくださらなくて?」
メイベル(苦笑)
「お嬢様が可愛すぎるのが原因かと……」
アリア(むぅ)
「……わたくし、ただ、平和に過ごしたいだけなのですけれど……」
メイベル
「無理だと思いますよ、お嬢様」
アリア
「……知ってましたわ……」
――こうして“帰国大作戦”は、
ミーナ寝返り大失敗という最高にコミカルな結末を迎えるのであった。




