第百六十六話 兄ィズ、まさかの“裏口交渉”!?
ミーナ、内部情報を漏らす!?**
アルヴエリア王立士官学園・整備班の倉庫――
薄暗い場所で、こそこそと密会する三つの影があった。
ノア「……来たな、ミーナ!」
ミーナ「ひゃっ……! 声大きいです……っ」
(手にメモ帳を抱えて震えている)
レオン「ミーナ、俺たち帰国したいんだ。妹のところに。
だから……その……メイド隊の弱点を……教えてくれ!」
ミーナ「弱点……弱点、ですか……?」
ミーナは視線を泳がせ、
背後を確認して、さらに左右を確認して、
また背後を確認した。
ミーナ(ひそひそ)
「……言ったら……私……“完璧な無言のお掃除デイ”に回されます……」
ノア「なんだそれ怖すぎるぞ!?」
レオン「ミーナ、そんな扱いを受けてたの……!?」
ミーナはこくりと頷き、
そして、小さな声で衝撃の情報を漏らす。
◆ 暴露その一:カティアの弱点
ミーナ(超小声)
「……カティアさん、忙しい時……甘いものを渡されると……
“買収された”って自覚しつつ受け取ってしまいます……」
ノア「買収できるのかよ!!?」
レオン「えっ……意外とチョロ――」
ミーナ「言っちゃダメです!!」
(ぶんぶん首を振る)
◆ 暴露その二:アシュリーの弱点
ミーナ
「……アシュリーさんは……
大の猫好きで……猫と目が合うと……すべての警戒心が飛びます……」
レオン「猫!? 猫連れてこれたら勝てるぞ兄貴!!」
ノア「待て、ここ学園だぞ!? どこで猫調達するんだ!?」
ミーナ
「……学園裏門のベンチに……毎朝います……
“シロ”という名前で……アシュリーさんの天敵です……」
ノア「天敵なの!?」
レオン「敵なのに好きなの!?」
◆ 暴露その三:リリアの弱点
ミーナ
「……リリアさんは……怒ると冷静になります……
逆に、褒められると……赤面して動きが鈍くなります……」
ノア「褒めればいいのか!?」
レオン「兄貴、それは……何か違う気がする……」
◆ 暴露その四:アネットの弱点
ミーナ
「……アネットさんは……“複雑な指示”が苦手で……
『AをしつつBを確かめ、Cが来たらDをする』と頼むと……固まります……」
ノア「それもう弱点というか……不憫では?」
◆ そして――ミーナ自身の弱点
レオン「ミーナの弱点は……?」
ミーナ
「……言ってしまったことが弱点になります……(涙目)」
ノア「ミーナぁぁぁぁ!!?」
レオン「守るから! ぜったい守るから!!」
◆ しかし――その会話は、すべて聞かれていた。
倉庫の扉が静かに開く。
カティア
「…………なるほど。
ずいぶん“有益な情報交換”をしていたようですね?」
アシュリー
「シロ……私のシロ……また名前出てる……」
リリア(真っ赤)
「ほ、褒めると弱くなるとか……言わなくていいのに……!」
アネット(固まった)
「Aを……しつつ……B……C……D……(停止)」
ノア「ぎゃああああああ!!!?」
レオン「ミーナ逃げてぇぇぇぇ!!」
ミーナ「ひゃああああ!!?」
次の瞬間。
兄ィズとミーナは、
メイド隊“制裁モード”により、
完璧な掃除当番(深夜コース) に編入された。
◆ そのころルヴァリア伯爵邸では
ティーセットの横で、アリアの前に一通の手紙が届けられる。
メイベル「……お嬢様、またアルヴエリアからです」
アリア
「まあ……また何かやらかしたのでしょうね……」
手紙の内容。
ノアから:
『アリア……ミーナを守れなかった。
俺たち今……ワックスがけ中……助けて……』
レオンから:
『ごめんアリア……兄貴が暴走した……
ぼくもう膝が……震えて……』
アリア
「…………ほんとうに、どうしてあんなに落ち着きがないのかしら……」
そう言いつつ、口元はどこか楽しげだった。




