第十七話 アリア、まさかのスランプ!? 魔法が不調になったらお兄様たちが大騒ぎで……!?
それは、とある演習の日のことだった。
「……あれ?」
右手に集めた魔力が、妙にぼやける。
いつもなら感覚でコントロールできるはずの術式が、微妙にズレていた。
アリア:「あ、あれ? うまく……出ない?」
指先から放たれた光球が、いつもより弱く、
目標からも微妙に逸れて地面にぽとり。
エマ:「……アリア? 今のって……わざと?」
アリア:「ううん……なんか、変なの。うまく集中できないっていうか……」
【昼休み・校舎裏ベンチ】
リリィ:「魔力のスランプ……あるわよ。年齢的にも成長途中だから、変化が出る子はいる」
アメリア:「疲れ、栄養、気圧、兄の圧……原因は多岐にわたるわ」
アリア:「さいごのひとつが一番ありそう……!」
しかし、そんな“ちょっとした不調”も──
兄たちの耳に入った瞬間、災害級の騒動となる。
【夕方・レイフォード邸】
ノア:「アリアが魔法制御に異常を? 詳しく話してくれ。いつ、どこで、どんな感覚だったのか。症状は一時的か継続的か?」
レオン:「病院だな!? いや違う! もっと信頼できる診療院に! 王立魔法医療研究所は!? 王城の医師を――!!」
アリア:「落ち着いて!? ただのスランプかもしれないって言ってるでしょぉぉ!!」
ノア:「念のため、徹底的に検査する必要がある。
身体、精神、環境要因、そして――魔力干渉による影響の可能性も」
レオン:「学園に変な虫(※男子)いなかった!? いた!? 魔力奪われた!?」
アリア:「そんなことされてないぃぃぃぃ!!」
【その夜】
結局、アリアは「念のため」という名目で、
屋敷の**魔力診断室(父の趣味で超高性能)**で軽くスキャンされることに。
技師:「うーん……魔力量は正常。むしろ平均より多めですね。
ただ、制御回路がちょっと過敏気味……つまり“疲れ”が原因かと」
ノア:「……なるほど。最近、急激に力を伸ばしていたしな」
レオン:「アリアに無理させすぎた……!」
アリア:「わたしの意思でやってたの! 兄様たちのせいじゃないよ!」
【翌朝】
ノア:「今日からしばらくは訓練も演習も“兄立会い監督制”とする」
レオン:「“魔力干渉ゼロ”のために屋敷で魔力制御トレーニング環境を用意した!」
アリア:「……こうしてまた、兄様フィルターが強化されていくのだった……」
【放課後・女子会】
エマ:「でも、魔法って“心”とつながってるから、
がんばりすぎちゃったアリアには、ちょっと“休め”って合図だったのかもね」
リリィ:「うん。周りが期待しすぎると、見えないところでプレッシャーになるし」
アメリア:「……あなたが“休むこと”に罪悪感を抱くの、少しわかるわ。でも、
休むのも才能のうちよ。堂々と休みなさいな」
アリア:「……うんっ!」
その夜、アリアはベッドでひとつ深呼吸しながらこうつぶやいた。
「わたしは、わたしのペースで。少しずつで、いいよね……?」
そしてその願いは――
次の日、“兄たちの新しい“妹の健康見守りスケジュール表(改訂第6版)”の配布”により、見事に木っ端みじんとなるのであった。
アリア:「それがプレッシャーなんだよぉぉぉぉ!!」




