↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不運な転生令嬢は、恩返ししたいのに家族が溺愛しすぎて周囲がざわつく!?  作者: やまちゃぁん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
161/191

第百五十五話 アルヴエリア三日間――兄ィズ大暴走、宿舎は大混乱!?

 アリア・レイフォードがアルヴエリア王国に降り立ってから、まだ間もない。

 だが、代表宿舎――いや、もはや“兄ィズ管理下のレイフォード領外出張支部”と化した部屋は、早くも戦場のような騒ぎになっていた。


 初日はアリアの到着とともに終了した――と思ったのは、あくまで外から見た話だ。

 宿舎内ではノアとレオンが、いまだに“妹歓迎仕様”の宿舎整備に余念がなく、メイド隊五人――カティア、アシュリー、アネット、リリア、ミーナが必死に制御に走り回っていた。


「ノア様! 寝具の配置を変えたらアリア嬢が落ちます!」

「落ちるわけないだろう! 角度は完璧だ!」


 レオンが支柱を手で押さえつつ叫ぶ。

 だが、支柱の上から床までの距離は微妙にズレており、もしアリアがそこに座れば確実にバランスを崩す――。


「安全第一です、兄上!」

 ミーナが魔導式補助装置を抱え、必死に飛び込んでくる。

 しかしノアはまるで聞く耳を持たない。


「妹が心地よく過ごせる環境――それが我ら整備班の最優先任務だ!」

「ちょ、ちょっと待ってください! 整備班の仕事は施設整備ですよ、妹の滞在準備ではありません!」


 声を張ったのはカティアだ。

 彼女の視線は、兄ィズ二人の行動を冷静に追う。

 が――ノアもレオンもその視線を完全に無視していた。


 翌日。


 アリアは宿舎内で、自室の荷解きをしていた。

 メイベルとクラリスが傍らで手伝うが、窓の外からは奇妙な音――ドタドタと工具の音や、壁を叩く音が聞こえる。


「……兄さまたち、また何をやらかしているのかしら」

 アリアはため息をつく。

 隣でクラリスが小声で答える。


「はい、あの方々の暴走はもはや宿命です、お嬢様……」


 そしてその暴走の一端を、廊下を見回るメイド隊は察知していた。


「……また始まりましたね」

「ノア様の“角度完璧計画”……絶対、床が崩れます」

 アネットが呟き、リリアとアシュリーも頷く。

 ミーナは手に持った魔導式防御器具を握りしめ、全身に力を入れた。


 宿舎中を駆け回るノアとレオン。

 工具箱を抱えたまま、ベッドの高さ調整、魔導照明の角度微調整、さらには暖炉周りの安全策を施す。

 その行動は完全に“アリア専用改造”であり、周囲の誰も止められない。


「レオン、照明の光量はアリアが目を細めないレベルに調整せよ!」

「了解、兄上! しかし、この光量調整には魔導石の過負荷リスクがあります!」


 その声に、メイド隊は同時に悲鳴を上げた。


「また、過負荷ですか!?」

「止めてください、火災が起きます!」

「むしろ火災で良いのか? 妹の安全第一はどうなった!」


 議論は平行線のまま、宿舎は異様な空気に包まれる。


 三日目。


 ついにアリアは、わずかな時間だけ廊下に出た。

 外を見ると、宿舎の一角に、兄ィズ二人が巨大な“妹用魔導傘”の組み立てに奮闘していた。


「……あの傘、必要なのかしら?」

「必要です。雨天でもアリア嬢を濡らさぬためのものですから」

 アネットが小声で説明する。

 ミーナは目を丸くした。


「……もう、この人たち、手がつけられない」


 その瞬間、レオンがバランスを崩し、工具箱を床に落とす。

 音に驚いたノアは、慌てて支柱を押さえる。


「兄上、工具が! 危ないです!」

「落ち着け、レオン! 今、私が支える!」


 それでも、支柱はわずかに揺れ、床板が軋む。

 もしここにアリアが歩いていたら――確実に尻もちをつく距離だった。


 その夜。


 アリアは自室で手紙を書いた。

 メイベルとクラリスが傍らで待機する。


「……兄さまたちの暴走、どうにかならないのかしら」

「はい、お嬢様。ですが、今回は初めてのアルヴエリアですから、制御は難しいです」


 その言葉通り、廊下の向こうでは、ノアとレオンの笑い声と工具音が絶え間なく響く。

 メイド隊五人は、魔導式防御や安全確保に全力を注ぎつつ、兄たちの暴走に振り回される日々を送っていた。


 開会式まで、あと一日。


 アリアは窓から遠くを見やる。

 競技場の建物や整備区画が見える。

 すでに各国の代表団も到着しており、緊張感は高まっていた。


 だが――


 宿舎では、ノアとレオンが“妹滞在最優先改修”を進め、

 メイド隊五人が必死に抑え、

 アリアがやや困惑しつつも微笑む、といういつもの光景が続いていた。


「……まったく、兄さまたちの熱意は止まらないわね」

 アリアは静かに呟く。

 だが、次の日から始まる競技大会で、この熱意がどう爆発するのか――

 それはまだ、誰も知る由もなかった。


 こうして、アルヴエリア滞在三日間は、

 兄ィズによる“妹歓迎大騒動”とメイド隊の必死の制御に明け暮れ、

 宿舎全体は静寂とは程遠い状態で日々を過ごすことになる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。