第十六話 妹の“初任務”は王城へのおつかい!? なのにお兄様が護衛に12人つけた結果――!!
「はい、これが依頼された書類。アリアさん、王城の文書局まで届けていただけますか?」
それは、魔法学園からアリアに与えられた**“公的なおつかい”**だった。
形式上は「学院推薦の信頼ある生徒による簡易任務」扱い。
目的は──
“信頼できる令嬢に、軽度の任務を通して社会経験を積ませる”
という、実に穏やかでまっとうな意図だった。
アリア:「……行って、渡して、帰るだけ……うん、簡単。すごく簡単なはず……」
※このときのアリアはまだ知らなかった。
この任務が、王都と王城を一時騒然とさせる事態になるとは――!
【レイフォード家・前日夜】
ノア:「妹が“単独で王城へ赴く”任務に就く。距離は片道30分、だが人通りも多く不測の事態は起こりうる」
レオン:「いやいやいや、ダメでしょ!? そんなの一人で行かせちゃダメでしょ!? 王城だよ!? お貴族の巣窟だよ!?」
ノア:「……最低限の護衛を手配しよう」
※レオンの“最低限”とは──
剣術試験で満点の執事3名、家直属の魔法騎士5名、王都駐在の文官護衛官2名、
さらに万が一に備えて、兄二人がこっそり“変装して別行動”。
合計12名のフル警護体制、発動である。
【翌朝・王都】
アリア:「……なんか……すっごく、見られてる……気がする……」
エマ:「……あれは……レイフォード家の魔導馬車?」
リリィ:「うそ、あの人たち全部、アリアの護衛……!? 王族来るみたいな雰囲気出てるわよ……」
アメリア:「あら、まさか“妹第一主義騎士団”が発足したわけじゃないでしょうね?」
【王城・正門】
文書官:「あ、アリア様ですね。本日、お届けの書類を──って……えっ!? その後ろの列は……!?」
兵士たち:「身辺警護対象、アリア・レイフォード嬢。通行許可証、人数分、提出済みです」
門番:「はいっ! 確認しましたっ!!(直立不動)」
※王城職員たちはこの日、
「年端もいかぬ令嬢ひとりに、これほどの護衛がつく例は前代未聞」
という記録を目撃した。
【さらに驚愕の出来事】
王太子・アルヴィンが偶然通りがかり、アリアを見つける。
アルヴィン:「……またお会いしましたね、アリア嬢」
アリア:「あっ、あの、こんにちは……!(王子様!? なんでまたここでぇぇ!?)」
アルヴィン:「何かお困りごとでも?」
アリア:「い、いえっ! あの、ただのおつかいですっ!!」
そのやりとりの背後では──
変装中のレオン(植木職人風):
「む……あれは王子!? あの距離感、親しみすぎでは!?(危険度レベル4)」
ノア(配達員風):
「……静かに、だが確実に……包囲を強化する」
【その日の王都・噂】
「今日、王城で**“護衛12人付きの天使みたいな令嬢”**が訪れたらしいよ」
「それって……アリア・レイフォードじゃない!?」
「王子と会話してたって噂も……!」
【レイフォード家・夜】
アリア:「兄様……なんで……なんであんな大袈裟なことに……!!」
レオン:「だって、王都には危険がいっぱいだから!!」
ノア:「妹は王家と関わった過去がある。ならば、こちらも相応の備えをすべきだ」
アリア:「“おつかい”って言ってるでしょぉぉぉぉぉぉ!!」
【結論】
アリアの“社会経験のための外出”は、
兄たちの暴走により、**「貴族界の過保護記録更新」**という伝説を生むこととなった。




