第百四十九話 兄ィズ、陛下の“特別指導”!? 謝罪なのに翻弄されっぱなしです!
アルヴェリア王立士官学園──前日の学園内での女王陛下絡みの大騒動を経て、兄ィズことノアとレオンは、正式な謝罪のため王宮への訪問を計画していた。
前日、学園内で巻き起こした“抱え上げ事件”に関して、二人は王宮へ先触れを出しお伺いを立て、女王陛下側の了承を得て日時を決定。これが正式な謝罪日となる。さすがの兄ィズも直接伺わずに行き当たりばったりで王宮へ赴くわけにはいかない──常識的な判断だ。(当然です。メイド隊)
学園の門を出ると、メイド部隊がすでに控えていた。
「本日は王宮訪問、過去の事件に対する正式謝罪です」
カティアが淡々と指示を出す。
「兄ィズ二人、くれぐれも行動は慎重に。昨日のような“突撃”は許されませんよ」
アシュリーが警告を発し、馬車の手綱を握るアネットが舌打ちする。
ノアとレオンはうなずき、しかし内心は緊張と不安でいっぱいだった。前日の出来事は、彼らにとって“妹アリアを守護した勇姿”のつもりだったが、客観的には大混乱である。今回こそ、正式な形で誤解を解く必要がある。
王宮の正門前に到着。門衛の許可を得て、兄ィズは深々と頭を下げる。メイド隊も整列し、緊張の空気が張り詰める。
謁見室の扉が開かれ、女王陛下が優雅に歩み出す。陛下は今回の事件の当事者。堂々とした態度で二人を迎える。
ノアとレオンは同時に深々と頭を下げる。
「先日の学園内での行動に関し、深くお詫び申し上げます」
「ご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございませんでした」
その声を聞き、女王陛下は微笑む。
「ふふ、よく来てくれましたね。……いやあ、先日は本当に大変でしたけれど、私は意外と楽しんでしまいました」
二人の視線が一斉に上がる。
「……え?」
「ええ。確かに予期せぬことに巻き込まれましたけれど、私にとっては刺激的で面白い出来事でしたわ。普段は退屈で仕方ないので、たまにはこういう“運動”も悪くありません」
女王陛下はゆったりと椅子に座り、足を組みながら兄ィズ二人を見やる。その表情にはユーモアと余裕があふれていた。
ノアは内心、「あれ? 謝罪に来たのに、なんだか褒められているような……」と混乱する。
レオンも同様、顔を真っ赤にして戸惑ったまま立ち尽くす。
その様子を見てカティアは小声で呟く。
「……また二人の暴走癖がこういう形で褒められるとは、学園生活も複雑です」
アシュリーが馬車の手綱を少し緩めながら、冷静に状況を見守る。
「でも、今回は本当に謝罪の意味を理解してもらえたのかしら……」
女王陛下は楽しげに笑いながらも、鋭い目で兄ィズを観察していた。
「さて、次にやることは……」
ノアが身を乗り出す。
「陛下、我らの護衛力を……」
カティアが慌てて制止する。
「駄目ですよ! 今回は謝罪です! 勇姿を見せる場ではありません!」
女王陛下はくすりと笑い、手を振る。
「安心してください、今日はその必要はありません。先日のことは“過ぎ去った騒動”として、もう大丈夫ですわ。……でも、次はもっと面白いことを期待していますよ?」
ノアとレオンは互いに目を合わせ、さらに戸惑う。
「……面白いこと、ですって?」
「ええ。こういう日常のちょっとした混乱、普段は退屈ですから、少しスリルがあったほうが良いのです」
その言葉に、リリアは思わず小声で悲鳴を上げる。
「え、えええ……まさか陛下が楽しむ方向に持っていくなんて!」
アネットは皮肉交じりに馬車越しに呟く。
「……さすが女王陛下。コメディセンスが国際級ですわね」
ミーナは小さくメモを取りながら、モノローグで読者に補足する。
《二人は真面目に謝罪に来たつもりなのに、陛下のコミカルさで完全に翻弄されています。これが王宮の恐ろしさか……いや、面白さか……》
カティアが深呼吸し、状況を整える。
「さて、そろそろ正式な謝罪を終えましょう。二人ももう少し落ち着いてください」
ノアとレオンは再度頭を下げる。
「陛下、この度は本当に申し訳ございませんでした」
「今回の騒動で、我々の配慮不足を痛感しております」
女王陛下は微笑み、手を軽く振る。
「ふふ、よろしいでしょう。あのことはもう忘れましょう。でも、次はもう少し驚かせてくれるのを期待していますよ」
兄ィズ二人はその言葉にまた戸惑うが、心の奥では少しほっとしていた。
やっと、事態が落ち着きつつある──はずだった。
カティアはため息混じりに馬車に戻る二人を見送りながら、心の中で呟く。
《……次こそ、彼らの暴走を完全に抑えられるかしら。王宮訪問は思った以上に大変ね》
アシュリーは馬車を操作しながらも、目を光らせる。
「……まったく、次は何が飛び出すことやら」
リリアは見守りの目を細めながら、悲鳴準備万端。
ミーナは小さくメモを取りつつ、今日の出来事をコメディタッチで記録する。
こうして、兄ィズの真面目な謝罪と女王陛下のユーモアあふれる対応で幕を閉じる。
普段退屈な日常にちょっとした刺激と笑いを加えた女王陛下と、戸惑う兄ィズたちの一幕。学園の外ではなく、王宮内部での小さな“国際コメディ”が生まれたのであった。




