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第百三十話 王城会議は嵐の予感

 ――その後。


 アリアたちは、王城の奥深くにある謁見の間から追い出されるように退室した。

 王太子アルヴィン殿下と兄ィズ(ノア&レオン)、そして神獣エルダリオンが繰り広げた乱戦まがいのやり取りは、もはや伝説の一幕として城中に語り継がれていることだろう。


 だが――その余波はまだ収まってはいなかった。


「……ふむ。さて、どうしたものか」


 場所は王城の一角にある会議室。

 煌びやかな装飾に囲まれながらも、その場の空気は妙に重たかった。

 そこに並んで座るのは、国の要職を担う者たち。王、宰相、近衛長、そして財務卿や文官たち。


 議題はもちろん――アリア嬢とその周囲の“問題児たち”である。


「まず整理しようではないか」宰相が深いため息をついた。「アリア嬢本人は……まあ多少の騒ぎを呼ぶものの、本人は善良で努力家であると見てよい」


「多少……?」財務卿が眉をひそめる。「遺跡の崩落とキメラ騒動、砦の半壊。これを“多少”と呼ぶのかね?」


「しかもその度に現れる、妙に決めポーズをとる双子の兄……あれは何だ?」近衛長は頭を抱える。「訓練場でも、警備兵に向かって『我らが妹を通すか、剣で通すか!』と迫っておったのだぞ」


「……エルダリオンもいるな」王は顎鬚を撫でながら呟いた。「神獣が人前に現れるなど、古文書を遡っても数百年ぶりのこと。あれをどう扱うべきか……」


 会議室に重苦しい沈黙が漂う。


「――で、アルヴィン殿下は?」宰相が探るように王を見やる。


 国王は苦い顔で答えた。

「兄ィズと殿下の口論は、ある意味では“恒例行事”となっておる。だが、今回は……やや過熱しすぎたな」


「やや……?」文官のひとりが小声で漏らす。「あれはもはや、学園の大講堂で公開決闘でも始まるのではと思うほどの有様でしたが」


「陛下、これ以上放置するのは危険ですぞ」財務卿が机を叩いた。「アリア嬢と兄ィズ、エルダリオンにアルヴィン殿下。王都の半分を吹き飛ばすことだって有り得る!」


 そして――会議は次の問題に移った。


「学園だ」近衛長が言う。「先の遺跡騒動の処理も終わっておらんうちに、アリア嬢が戻ってきた。友人たちが安堵したのは結構だが……例の“ウォッチ隊”がまたぞろ結成されていると聞く」


「ウォッチ隊……?」宰相が目を細める。


「アリア嬢を見守るという名目の、半ば秘密結社のようなものです」文官が書類をめくった。「隊員数、現在三十名超。活動内容は“アリア嬢の登校確認”“アリア嬢の昼食護衛”“アリア嬢を悩ます男子の調査”など」


「……ほとんどストーカーではないか」宰相が頭を抱えた。


「しかも、その中核に兄ィズが入り込んでいるというではないか!」財務卿が青ざめる。「放置しておけば学園が戦場になるぞ!」


 議論は収拾がつかず、ついには国王が結論を下す。


「……やむを得ん。王家より監察官を派遣し、学園の現状を精査させる。アリア嬢を巡る騒動の火種を摘み取るのだ」


「監察官、ですか」宰相が頷く。「確かに、これ以上の放置は国の威信に関わりますな」


「よかろう。人選は私が行う」王は立ち上がる。「そして――アリア・リュミエール・レイフォード嬢本人には、再度、正式に呼び出しをかける。彼女の意思を確認する必要がある」


 そうして決まった“監察官派遣”と“アリア嬢召喚”。

 その知らせは、いずれアリアたちの日常に嵐をもたらすことになる。


「……いや、嵐どころでは済まぬかもしれぬな」宰相が小さく呟いた。

「兄ィズとエルダリオン、そして殿下。これに監察官まで加われば……学園は無事でいられるだろうか?」


 その言葉に、会議室の全員が顔を見合わせ、同時に深いため息をついた。


――こうして、次なる波乱の幕は静かに上がろうとしていたのだった。

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