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第百二十九話 王城に呼び出されし面々

 王都の中央、青空にそびえる王城。

 白亜の石造りは昼の光を反射して眩く輝き、門前を行き交う人々は皆、思わず背筋を伸ばした。


 その城の正門を、アリア・リュミエール・レイフォードは兄ィズとセリーヌ、そしてエルダリオンを伴ってくぐっていた。


「ううむ……いよいよ王城か」

ノアが腕を組み、わざとらしく威厳を漂わせる。


「だから、お兄様。ここはあなたの見せ場ではありませんから!」

アリアがため息をついたが、すでに遅い。


「よいかアリア! 我ら兄ィズはここでもお前の守護者であると示すのだ!」

「そうだ! 王太子殿下だろうが国王陛下だろうが、アリアを守ると宣言してやる!」

 レオンまで拳を握って気合十分。


「……お願いだから余計なことは言わないで……」

 アリアは小さく呻き、セリーヌは苦笑しながらその背を軽く叩いた。


 そして、彼らが玉座の間に通されると――。


 豪奢な赤絨毯の先、黄金の椅子に腰掛けた国王、隣には宰相。そしてその脇に立つ青年がいた。


 整った顔立ち、鋭い瞳。

 王太子、アルヴィン=レグニス・ルシアス殿下である。


「――やれやれ、また君たちか」

 彼は開口一番、深いため息をついた。


「久しいな、と言うべきなのか? いや、顔を合わせるたびに騒ぎを起こす連中だから、久しいとも感じないな」


「なんだと! 騒ぎを起こしているのは我々ではない!」ノアが即座に反論する。

「そうだ! 殿下こそ、我ら兄ィズの守護を理解せず妨げてばかりではないか!」レオンも声を上げる。


 アルヴィンは額を押さえ、半眼で二人を睨んだ。

「……本当に懲りないな、君たちは」


「お待ちください殿下!」アリアが慌てて前に出る。

「兄様たちは悪気があるわけではなくて――」


「む、アリア! 我らを庇ってくれるのか!」ノアが感涙に震え、

「アリアはやはり天使……いや、女神!」レオンも両腕を広げる。


「やめてくださいほんとに!!」アリアは顔を真っ赤にして両手で制止した。


 そこへ、金色の鬣を輝かせる神獣エルダリオンが悠然と歩み出る。

「……フン。我がここにおるというのに、未だ“守護者”を自称するとは、片腹痛いわ」


「なんだと! お前こそ、神獣でありながらキメラからアリアを守らなかったではないか!」

ノアが詰め寄り、レオンも続く。

「そうだ! 実際にアリアを救ったのは我ら兄ィズだぞ!」


 エルダリオンは一歩引き、涼やかに言い返す。

「いやいや、我は見ていたぞ。あの時アリアを救ったのは――そこの女ではないか」

 視線の先、セリーヌを指し示した。


「え、わ、私!?」セリーヌは目を瞬かせる。

「いや、確かに運びはしたけれど……」


「ほら見ろ!」アルヴィンがすかさず言葉を挟む。

「やはり君らの“守護”など役に立っていないではないか」


「ぐぬぬ……」

「そ、そんなはずは……!」

 兄ィズは同時にうなだれ、赤絨毯の上で膝をついた。


「……(この人たち、ほんとに何してるの……)」アリアは額を押さえた。


 玉座の上の国王はその光景を見て、ひげを揺らして大笑いした。

「はっはっは! 面白いではないか、レイフォード家の者たちよ!」


「お、面白いで済む話では……」宰相が冷や汗を流して抗議するが、国王の笑いは止まらない。


 そこへ、玉座の間の扉が勢いよく開いた。


「アリアァァァァ!!」


 全力で叫びながら駆け込んできたのは、アリアの父、アレクシス伯爵であった。

 背後には伯爵家の兵がずらりと並んでいる。


「父上!? なんでここに!!」アリアが目を丸くする。


「なぜも何もあるか! 陛下! アリアにご用とのことですが……まさか我が娘に危険な任務を課すおつもりではあるまいな!」


「お、おい、落ち着けアレクシス伯爵……」宰相が青ざめる。


「断じて許さんぞ! アリアは我が宝、我が希望、我が生きる意味! この命に代えても守り抜く!」


「父上!? 声が大きい!」


 兄ィズ、エルダリオン、セリーヌ、王太子、王、宰相――そして父。

 謁見の間は見事なまでに大混乱へと陥った。


 アリアはこめかみを押さえながら、ただただ心の中で叫ぶしかなかった。


(お願いだから……誰か、この状況を収拾してぇぇぇ!!)


――第百二十九話、混沌の王城謁見編、ここに幕を開ける。

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