第百十五話 ニュータイプ!? 兄ィズ
絶海の孤島――岩肌と松林に囲まれた孤島で、ノアとレオンは日々の修業に励んでいた。
「ん?今の音、聞こえなかったか……?」ノアが眉をひそめる。
「うん、確かに……風の音じゃないな……」レオンも耳を澄ませる。
二人が警戒を強めたその時、セリーヌがにこやかに振り向いた。
「ほらほら、どうしたの? さあ、魔法の修業を始めるわよ」
「ちょっと、待ってくれ……」ノアが声を上げ、手を上げて制止する。
二人は体を低く構え、周囲を探る。小鳥のさえずりや波の音の中、何か不穏な気配が漂っていた。
「――これは!」ノアが叫ぶ。
「まさか……!」レオンも同時に声を張り上げる。
「アリアのピンチだ!!」
二人の瞳が決意に燃え、体にアドレナリンが回る。だが、すぐに現実を思い出し、眉をひそめる。
「だが、どうする……」ノア。
「アリアはどこだ!」レオン。
セリーヌが首を傾げ、状況を見守る。
「なにがどうなっちゃったのかしらぁぁ?」と、彼女が訊く。
「アリアが、妹が大変なんだ!」二人は声を揃えて言う。
「なんでわかるのよぉ」セリーヌ。
ノアが胸を張って答える。
「――俺たちにはわかるのだ、アリアが全、全がアリアなのだから」
レオンも頷き、少し胸を張る。
「……あぁぁ、よくわかんないけど……」セリーヌはため息混じりに笑う。
「まあ、よろしいわ。行きましょう。急がないとね」
セリーヌは手をかざすと、空の上から鋭い鳴き声が響いた。
「ロック鳥、呼ぶわよ!」
大きな羽ばたきとともに、巨大な鳥が空から降りてくる。くちばしは鋭く、翼は夕日の光を受けて輝く。ロック鳥はノアとレオンを見下ろし、威風堂々とした姿を見せる。
「……また、あれに乗るのか……」ノアが小さく息をつく。
「……やはり、想像以上にデカいな……」レオンが肩をすくめる。
セリーヌは二人を促す。
「さあ、さっと乗るのよ」
二人はおそるおそる鳥の背に跨る。羽毛の感触は意外に柔らかく、だが足場は不安定だ。
「し、しっかり持て!」ノアが叫ぶ。
「お、おう!」レオンも必死に羽を掴む。
セリーヌが軽く手綱を操作すると、ロック鳥は風を切り、鋭く空へ舞い上がる。
「うわぁぁぁぁ! マジかぁぁぁぁ!!」二人の悲鳴が風に乗る。
「落ちないでね、文明人たちw!」セリーヌが笑いながら注意する。
空中から見る海と孤島の景色は圧巻だったが、兄ィズ二人にはそれどころではない。体をしっかり固定しながら、何とかバランスを取ろうと必死である。
海風が肌を打ち、鳥の羽ばたきの衝撃で体が揺れる。
「マジか、こりゃスリル満点すぎる!!」ノアが叫ぶ。
「おい、俺たち死ぬんじゃないのか!? セリーヌ、操縦頼む!」レオンも必死だ。
セリーヌは冷静に鳥を操る。
「安心して、私は慣れているわ」
「慣れてるって、怖ぇぇぇぇぇ!」二人は悲鳴を上げ続ける。
やがて、遠くに遺跡地区の方向が見えてくる。
「行き先はあそこだ」ノアが指をさす。
「王都方面の遺跡ね、了解」セリーヌ。
「急げぇぇぇぇ!!」レオンが叫ぶ。
飛行中も兄ィズは落ち着かない。
「魔法で何か飛ばしてブレーキかけられんのか?」ノア。
「無理だ、制御できねぇ!!」レオン。
「まあ、落ちなければどうにかなるわよ」セリーヌは微笑む。
風を切る音、海面の光、背後に残る孤島――状況は絶望的だが、二人の心にはアリアを助ける使命感が燃えていた。
「もう少しだ……あそこまで行けば……!」ノアが鳥に声をかける。
「でも、急ぎすぎると遺跡の上空でぶつかるぞ!」レオンが心配する。
鳥は急降下し、遺跡の周囲を旋回する。
「到着するわよ!」セリーヌ。
二人は体を強く鳥に押し付け、到着を待つ。
やがて遺跡地区が目前に広がり、森や建物が眼下に迫る。
「アリア、待ってろ! 俺たちが駆けつける!!」ノアが叫ぶ。
「兄ィズ、やるしかないな!」レオンも拳を握り締める。
ロック鳥は急旋回し、遺跡地区の上空に到着した。
「さて……どういう状況になっているか……」セリーヌが視線を走らせる。
「まさか……魔法の暴走とか……?」ノアが口を尖らせる。
「うん、それくらいあるかもね……」セリーヌは苦笑。
砂埃と光の反射、遺跡の陰影に目を凝らす二人。
「アリアは……どこだ?」レオン。
「見えない……どうやら地下か、もしくは施設の中か……」ノア。
三人は覚悟を決める。
「行くわよ!」セリーヌがロック鳥を急降下させる。
「うおおおおおお!!」二人は絶叫しながら、ついに遺跡の正面へ着地する――




