第十二話 妹、人生初の反抗期!? お兄様たちの溺愛にブチ切れたアリアが、家出を決行!!
きっかけは、小さな、ほんの小さな一言だった。
「アリア、おまえの下駄箱に“押し花付きの手紙”が入っていただろ。魔力感知で誰か割り出せるから、提出してくれ」
「……レオン兄様、それ、勝手に開けたの……?」
「当然だろう、妹に何かあってからでは遅いからな!」
その瞬間、アリアの中で何かが――ぷつんっと切れた。
「もうやだっ!! 兄様たちのそういうとこ、だいっきらいっ!!」
【数時間後 レイフォード邸・応接室】
ノア:「アリアの部屋に、**『さがさないでください(さがしてもどうせ見つかる)』**という手紙が残されていた」
レオン:「なにそのツンデレ家出宣言!?」
ノア:「なお、枕元にはぬいぐるみが残され、部屋の戸締まりは完璧。
明らかに“きちんと準備しての短期家出”だ」
レオン:「くそぉ……アリア、可愛すぎてどこかに閉まっておきたいぃぃ!!」
ノア:「気持ちはわかるが、おまえが問題の火種だ。深く反省しろ」
【その頃 家出先のアリア】
アリア:「……はぁ、怒って飛び出してきたけど、どこ行こう……」
現在、アリアがいるのは――
家から徒歩15分、リリィ・クロフォードの家。
実は学園に通う貴族令嬢の中でも最も“実家が近い”仲良しさんである。
リリィ:「ようこそ、我が家へ。家出の旅は第一ステージですわね!」
アリア:「旅なの!? これ!?」
【レイフォード邸・兄たちの作戦会議】
ノア:「アリアを無理に連れ戻すのは逆効果。ここは“静観”が正しい」
レオン:「つまり“そっと見守る兄”ムーブか……あえて! あえての!!」
ノア:「ただし……本当に困った時にだけ、そっと手を差し伸べる用意はしておく。それが家族だ」
レオン:「ああ……俺たちの妹、今まさに“自立と感情の成長”の真っ最中なんだな……!」
【夜・リリィ邸】
アリア:「……ちょっと、すっきりした」
リリィ:「え?」
アリア:「なんか、怒っていいんだって思ったら、ちょっと心が軽くなった……。
だって、私、兄様たちのことが嫌いなわけじゃないもん」
リリィ:「知ってるよ。むしろ、だいすきすぎて、いろいろ我慢してたんでしょ?」
アリア:「……うん」
小さな声でうなずいたアリアの目に、涙が浮かぶ。
「兄様たちが悪い人じゃないって、わかってる。でも、息が詰まっちゃうの……守られすぎて、自分が何もできないみたいで……」
リリィ:「それ、ちゃんと伝えたほうがいいよ」
アリア:「うん……」
【翌朝】
アリアが家の門をくぐると、そこには――
兄二人が花束を持って正座していた。
アリア:「な、なんで正座……!?」
レオン:「アリア、俺はおまえの成長を、兄として全力で受け止めると誓う!」
ノア:「必要なのは“監視”ではなく、“信頼”であったと、ようやく理解した……」
アリア:「なにこの謝罪会見みたいな光景~~~っ!!」
その後、アリアはきちんと兄たちと話し合い、
「見守る」という約束を取り付け、
少しずつだけど、“お兄様フィルター越しじゃない世界”を手に入れていった。
……なお、その日から兄たちがアリアの半径3メートル以内に近づく回数は、
1日平均36回から29回に減ったという。




