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第百十一話 まさかの魔法修業!? 鳥に乗ってきた謎の女性

山奥の小屋。

今日もノアとレオンは、朝から意味不明な修業に振り回されていた。


「ぐっ……腕が上がらねぇ……!」

「ノア、頑張れ! あと百回だ!」

「お前だってヘロヘロじゃねぇか!!」


木に逆さ吊りにされながら懸垂(?)を繰り返す兄ィズ。その下では老人が腕組みをしてニヤニヤしている。


「ほほぅ、だいぶ根性がついてきたのぅ。もう百回追加じゃ」

「追加すんなぁぁああ!!」


汗だくの二人は心底この生活から解放されたいと願っていた。



そんなある日。

水汲みに行った帰り、レオンがふと手元を滑らせて桶を落とした。


「あっ!」

ガシャーン!


思わずレオンが咄嗟に詠唱。

「《風よ!》」


落ちかけた水がふわりと浮き上がり、そのまま桶の中へ戻っていく。


「……よし、セーフ!」


だが、背後から聞き慣れた声が響いた。

「……ほう?」


振り返ると、例の老人が立っていた。目をギラリと輝かせて。


「おぬしら……魔法も使うのか……?」


「……え? い、いまさら!?」

「この数週間、気づいてなかったのかよ!」


ノアとレオンは顔を見合わせてがっくり。



「ふむ……」と、老人は顎をさする。

「ならば、魔法の修業もせねばならんのぅ」


「――いやいやいや!!」

「もう結構ですから!!」


兄ィズは全力で拒否。


だが、老人は腕を組んでしれっと告げた。

「残念ながら、わしは魔法を教えられん」


「……あれ? ってことは?」

「ラッキー! これで帰れるんじゃ……!」


小声で囁きあう二人。

しかし次の瞬間、老人がさらりと一言。


「よし、少し待っておれ」


そう言って小屋の裏へ回っていった。



「……何をする気だ?」

「帰れるって言ったのに、嫌な予感しかしねぇ……」


しばらくすると。

ドォォォォン!!


小屋の裏から七色の煙がもくもくと天に昇った。


「な、なんだあれは!? 狼煙か!?」

「派手すぎるだろ!!」


驚く二人。だが次の瞬間、辺りが急に薄暗くなる。


「……おい、ノア。なんか空が暗くねぇか?」

「まさか天候まで操作したのか……!?」


二人が空を見上げると――。

そこには、天を覆うかのような巨大な影。


「なっ……鳥!? でっけぇぇぇぇ!!」

「ロック鳥かよ!!」


バサァァァァン!!

突風を巻き起こしながら、その巨鳥は兄ィズの前に着地した。



「ひぃぃぃぃ!」

「ま、またバケモンかよ!」


悲鳴を上げる兄ィズ。

しかし巨鳥の背から、すらりと人影が降り立った。


女性だった。


長い黒髪を風にたなびかせ、凛とした眼差しを向けてくる。ローブの裾からは魔術師らしい杖が覗いていた。


「……呼ばれて来てみれば。あいかわらず突拍子もないのね、爺ぃ」


その声は冷ややかで、しかしどこか慣れた調子。


しばらくして小屋の裏から戻ってきた老人が、満面の笑みを浮かべる。

「おお! 来てくれたか、娘よ!」


「娘って誰だ!?」

「知り合いかよ、じいさん!!」



老人と女性はしばし会話を交わしていた。

内容は――


「この若造ども、魔法が使えるらしい。そこでおぬしに修業を頼みたい」

「……また他人を巻き込むのね。いいわ、久しぶりに弟子を取るのも悪くない」


「……え?」

「……えぇぇぇぇぇぇぇ!?」


兄ィズの顔が青ざめる。


「な、なんかヤバくないか!?」

「ああ、確実にヤバい……! 逃げろ!!」



二人は同時に駆け出した。

森を駆け、川を飛び越え、谷を越え、必死に逃げる。


「嫌だ! もう魔法修業なんてゴメンだぁぁぁぁ!!」

「俺は帰る! 絶対帰る!!」


だが――。

頭上に広がる影が、彼らを追い続けていた。


「……ついてきてるぅぅぅ!!」

「クソッ、鳥のほうが速ぇぇぇ!!」


巨大なロック鳥は軽々と森を飛び越え、二人の進路を塞ぐように降り立った。


「はぁ……はぁ……」

「終わった……!」


その目の前に、再び女性魔法使いが姿を現す。

涼しげな笑みを浮かべながら――。


「さあ、魔法の修業を始めましょうか」


「――いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


絶叫するノアとレオン。

こうして、兄ィズの過酷(?)修業は、新たなステージへと突入したのだった。


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