第十一話 お兄様がこっそり変装して学園潜入!? アリアの平穏が限界突破で崩壊中!!
その日、いつものように初等学園の教室に入ると、エマが耳打ちしてきた。
「ねぇアリア、聞いた? 今日から“転入生”が来るって」
「えっ? この時期に? 誰だろう……」
その瞬間、教室の扉がゆっくり開く。
「…………初めまして。今日からこちらにお世話になります。リオン・グランフェルドと申します」
そこに現れたのは――
どこかで見たような、長身で彫りの深い顔立ち。
鋭い金の瞳に、作り慣れてない笑顔。
漆黒の制服が、妙に似合っている。
アリア:「……………………えっ」
リリィ:「アリアちゃん? 顔、ひきつってる……?」
エマ:「ていうか、なんか見覚え……って、ちょっと待って、それレオン兄様では!?」
──そう、アリアの第二兄、**レオン・レイフォード(通称:兄2)**が変装して学園に潜入してきたのだ!!
しかも、“転入生として正式に登録済み”というおまけ付き!
アリア:「ちょっとぉぉぉ!! どういうことなのぉぉぉ!!」
レオン(仮名:リオン):「いやー、気になるよねぇ? 妹が学園でどんなふうに過ごしてるか。
どんな男子としゃべって、どんな女子に囲まれて、どんな顔でお昼を食べてるか……見たくない? 見たくなるよね!?」
アリア:「なりません!!」
【回想:前夜 レイフォード家・作戦室】
レオン:「アリアに手紙を出した差出人が“女子である可能性”が高まっている」
ノア:「だが油断はできない。“兄の目が届かない時間帯”が存在する以上、現地視察が必要だ」
レオン:「なら、俺が行こう。変装も完璧にして、“普通の生徒”として潜入すれば――」
ノア:「却下する理由が……ないな」
レオン:「よし決定!! 変装完了ぉぉぉ!!」
(即・学園に嘆願書を提出、あっさり受理される)
学園生活一日目。
レオン(仮):「さて、妹の周囲の“危険分子”を洗い出そうか……っと」
・ユリウス:小動物系男子。アリアに詩的な視線を送りがち。
→【要監視】
・アメリア:銀髪の氷姫。最近の仲良し度が高すぎる。
→【要注意】
・シーナ:素直で努力家、だが視線が熱い。
→【微糖警戒】
・女子全般:アリアと接触する者すべて。
→【もはや全員が敵】
レオン(仮):「ああぁ……可愛い妹に近づくやつ全員、キラキラしててむかつくぅぅ……!!」
そして昼休み、事件は起こった。
アリアの机に何気なく置かれたクッキーの入った小包。
「えっ、これ……差出人、ない……」
レオン:「不審物だ!!(机をバァン!!)」
アリア:「兄様ぁぁぁぁ!!!」
教室騒然。
ユリウス:「あの、ぼくが作ったやつです……! あの、ただのお礼で……!!」
アメリア:「ふん、せっかくの“貴族的友情菓子”を疑うなんて……無礼よ」
生徒一同:「なにこの修羅場……」
その日の夜。
アリア:「もう、お願いだから帰って……本当にバレてるから!!」
レオン:「いやいや! なぜか“モテてる転入生”扱いで男子に絡まれて断るの大変だったんだよ!?!」
ノア(突如登場):「では、次は私が行こう」
アリア:「絶対ダメェェェェ!!!」
──こうして、“兄の変装潜入事件”は無事(?)に一日で終わった。
だがアリアの心に、新たな決意が芽生える。
(私……がんばって、普通に生活するだけで……兄様たちの過保護を乗り越えなきゃいけないの!?)
その決意が、“とんでもない事件”を呼ぶことになるとは、まだ知る由もなかった……。




