第百二話 妹、“誕生日大騒動”で神獣まで乱入!? 王立学園は大混乱に!!
アリアの誕生日から、数日が経った。
邸宅での盛大すぎる祝いもようやく終わり、ようやく日常に戻れる――はずだった。
……だが、王立学園はそうはいかなかった。
◆
「アリア様のお誕生日に呼ばれなかったなんてっ!」
「わたくしたちもお祝いしたいですわ!」
「そうだ、学園で“第二の誕生日会”を開こう!」
気づけば生徒会を中心に、生徒どころか教師まで巻き込んだ“勝手にお祝い計画”が進行中。
大広間には花が飾られ、魔法仕掛けの装飾がきらめき、すでに舞踏会会場めいた雰囲気になっていた。
◆
「……何だ、これは?」
柱の陰に潜んでいるつもりの長兄ノア。
「妹を利用した余興だと? 断じて看過できん」
黒マントを翻す、いや学園で何してるのレオン。
「アリアは俺たちだけ祝ってれば充分だろうがぁぁっ!」
なぜか荷物に埋もれて吠えるレオン(二回目)。
――そう、兄ィズである。
普段から“潜伏”して妹を監視しているのは学園でも有名。潜伏というより「見守りという名の堂々乱入」なのだが。
◆
その翌日。
授業を終えたアリアは、同級生たちからの妙な視線に気づいた。
「……何か御用ですか?」
「い、いえ! 今日の放課後、大広間にいらしてくださいませ!」
「そ、そうです! サプライズ……じゃなかった、ささやかなお祝いが!」
――嫌な予感しかしない。
案の定、大広間に入った瞬間。
「アリア様! お誕生日おめでとうございます!」
「おめでとうーっ!」
花火が上がり、紙吹雪が舞い、魔法楽団が演奏を始める。
ダンスを誘う手。積み上がる贈り物の山。
「えっ、えぇっ!? ちょっと待ってください!」
◆
そのとき。
バァン! と扉が開いた。
「やはりやったな貴様らぁぁッ!」ノア。
「妹を勝手に祭り上げるなど断じて許さん!」レオン。
「この馬鹿騒ぎ、俺が直々に止めてやるッ!」やっぱりレオン(二回目)。
「うわあああ! 出たぁあ!」
「キャァァァ♪アリア様の兄君たちよぉぉ!」
悲鳴と同時に、なぜか乱闘が始まった。
ケーキを巡ってレオンが大立ち回り。
ノアは睨んだだけで生徒が勝手に卒倒。
教師は右往左往。会場はすでにカオスである。
◆
その混乱のさなか――。
ズズン……!
大広間の床に黄金の紋様が走る。
「な、何だ!?」
「魔法陣……?」
光が弾け、現れたのは――。
金色のたてがみを持つ荘厳な獅子。
異界の守護者、神獣エルダリオン。
『……我が呼ばれざるは、不服であるぞ』
低く響く咆哮に、生徒も教師もガタガタ震える。
「エ、エルダリオン!?」
「な、なんでこんなところに!?」
「アリア様が……呼んだのか!?」
「わ、私は呼んでいません! 勝手に……!」
そう、彼は以前アリアの“疑似召喚魔法”で強制契約してしまった存在。
どうやら今回も「契約者が混乱=勝手に出てくる」らしい。
◆
『誕生日祝いに我を招かぬとは何事か。人間ども、心得違いも甚だしい』
エルダリオンの声が響き、大広間はしんと凍りつく。
……が。
「妹のためなら神獣すら歓迎だ!」ノア。
「むしろ余興に丁度いい!」レオン。
「ケーキ運べぇぇッ!」レオン(また)。
『……余興、だと?』
黄金の瞳がギラリと光った瞬間――。
「も、もうやめてくださぁぁいッ!」
アリアの魔力が制御を失い、装飾魔法と干渉した。
宙を舞うシャンデリア。浮遊する花瓶。紙吹雪は嵐と化し、大広間は完全にカオス。
「アリア! 落ち着け!」
「妹よ深呼吸だ!」
「俺が受け止めるッ!」
兄ィズが駆け寄るが、逆に混乱が増すばかり。
◆
嵐の中心へ、エルダリオンが進み出た。
『……静まれ。我が契約者よ』
たてがみが金色に輝き、暴走魔力を吸い込むように鎮めていく。
「……エルダリオン?」
『誇りを忘れるな。おまえは己を律する者であろう』
その声に、アリアの肩が震え――やがて小さく頷いた。
こうして騒ぎは、ようやく収束を迎えた。
◆
大広間は、紙吹雪とケーキでぐちゃぐちゃ。
生徒も教師も呆然と座り込み、ただ静寂だけが残る。
エルダリオンはふっと姿を消した。
……ただし一言を残して。
『次は必ず、我も招け。良いな?』
それを聞いた兄ィズは。
「……また来る気か」ノア。
「……厄介な客人だ」レオン。
「……ケーキの数、倍にしなきゃなッ!」レオン。
「……もう誕生日なんて要りません……!」
アリアは本気で頭を抱えたのだった。




