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第百二話 妹、“誕生日大騒動”で神獣まで乱入!? 王立学園は大混乱に!!

 アリアの誕生日から、数日が経った。

 邸宅での盛大すぎる祝いもようやく終わり、ようやく日常に戻れる――はずだった。


 ……だが、王立学園はそうはいかなかった。



「アリア様のお誕生日に呼ばれなかったなんてっ!」

「わたくしたちもお祝いしたいですわ!」

「そうだ、学園で“第二の誕生日会”を開こう!」


 気づけば生徒会を中心に、生徒どころか教師まで巻き込んだ“勝手にお祝い計画”が進行中。

 大広間には花が飾られ、魔法仕掛けの装飾がきらめき、すでに舞踏会会場めいた雰囲気になっていた。



「……何だ、これは?」

 柱の陰に潜んでいるつもりの長兄ノア。


「妹を利用した余興だと? 断じて看過できん」

 黒マントを翻す、いや学園で何してるのレオン。


「アリアは俺たちだけ祝ってれば充分だろうがぁぁっ!」

 なぜか荷物に埋もれて吠えるレオン(二回目)。


 ――そう、兄ィズである。

 普段から“潜伏”して妹を監視しているのは学園でも有名。潜伏というより「見守りという名の堂々乱入」なのだが。



 その翌日。

 授業を終えたアリアは、同級生たちからの妙な視線に気づいた。


「……何か御用ですか?」

「い、いえ! 今日の放課後、大広間にいらしてくださいませ!」

「そ、そうです! サプライズ……じゃなかった、ささやかなお祝いが!」


 ――嫌な予感しかしない。


 案の定、大広間に入った瞬間。


「アリア様! お誕生日おめでとうございます!」

「おめでとうーっ!」


 花火が上がり、紙吹雪が舞い、魔法楽団が演奏を始める。

 ダンスを誘う手。積み上がる贈り物の山。


「えっ、えぇっ!? ちょっと待ってください!」



 そのとき。

 バァン! と扉が開いた。


「やはりやったな貴様らぁぁッ!」ノア。

「妹を勝手に祭り上げるなど断じて許さん!」レオン。

「この馬鹿騒ぎ、俺が直々に止めてやるッ!」やっぱりレオン(二回目)。


「うわあああ! 出たぁあ!」

「キャァァァ♪アリア様の兄君たちよぉぉ!」


 悲鳴と同時に、なぜか乱闘が始まった。


 ケーキを巡ってレオンが大立ち回り。

 ノアは睨んだだけで生徒が勝手に卒倒。

 教師は右往左往。会場はすでにカオスである。



 その混乱のさなか――。


 ズズン……!

 大広間の床に黄金の紋様が走る。


「な、何だ!?」

「魔法陣……?」


 光が弾け、現れたのは――。


 金色のたてがみを持つ荘厳な獅子。

 異界の守護者、神獣エルダリオン。


『……我が呼ばれざるは、不服であるぞ』


 低く響く咆哮に、生徒も教師もガタガタ震える。


「エ、エルダリオン!?」

「な、なんでこんなところに!?」

「アリア様が……呼んだのか!?」


「わ、私は呼んでいません! 勝手に……!」

 そう、彼は以前アリアの“疑似召喚魔法”で強制契約してしまった存在。

 どうやら今回も「契約者が混乱=勝手に出てくる」らしい。



『誕生日祝いに我を招かぬとは何事か。人間ども、心得違いも甚だしい』


 エルダリオンの声が響き、大広間はしんと凍りつく。

 ……が。


「妹のためなら神獣すら歓迎だ!」ノア。

「むしろ余興に丁度いい!」レオン。

「ケーキ運べぇぇッ!」レオン(また)。


『……余興、だと?』


 黄金の瞳がギラリと光った瞬間――。


「も、もうやめてくださぁぁいッ!」


 アリアの魔力が制御を失い、装飾魔法と干渉した。

 宙を舞うシャンデリア。浮遊する花瓶。紙吹雪は嵐と化し、大広間は完全にカオス。


「アリア! 落ち着け!」

「妹よ深呼吸だ!」

「俺が受け止めるッ!」


 兄ィズが駆け寄るが、逆に混乱が増すばかり。



 嵐の中心へ、エルダリオンが進み出た。


『……静まれ。我が契約者よ』


 たてがみが金色に輝き、暴走魔力を吸い込むように鎮めていく。


「……エルダリオン?」

『誇りを忘れるな。おまえは己を律する者であろう』


 その声に、アリアの肩が震え――やがて小さく頷いた。


 こうして騒ぎは、ようやく収束を迎えた。



 大広間は、紙吹雪とケーキでぐちゃぐちゃ。

 生徒も教師も呆然と座り込み、ただ静寂だけが残る。


 エルダリオンはふっと姿を消した。

 ……ただし一言を残して。


『次は必ず、我も招け。良いな?』


 それを聞いた兄ィズは。


「……また来る気か」ノア。

「……厄介な客人だ」レオン。

「……ケーキの数、倍にしなきゃなッ!」レオン。


「……もう誕生日なんて要りません……!」

 アリアは本気で頭を抱えたのだった。


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