第十話 図書室のひみつの手紙!? アリアに届いた“差出人不明のラブレター”が波紋を呼ぶ!!
昼休み、魔法演習室の廊下。
「あれ……わたしのロッカー、なんか変な感じ……?」
アリアは、いつものように小さなロッカーを開けた瞬間――
一枚の桃色の封筒が目に飛び込んできた。
「……えっ、えぇっ!? こ、これは……」
封には差出人の名はなし。
でも丁寧で、ほんのり香るような上品な香り。
「~~~っ!? こ、これ、こ、恋文ってやつでは~~!?!?」
ぶわっと耳まで真っ赤になるアリア。
でも、誰にも見られていないと思ったその時。
「……見たわ」
「わたしも、見たわ」
どこからともなく現れる影、二つ。
エマ・ハート:「アリア、今の……“ラブレター”じゃないの?」
リリィ・クロフォード:「ふふ……この手紙、封の飾り、貴族令嬢の“手作り印”ね。
間違いなく、正式な恋文の形式よ」
アリア:「なんでそんなこと知ってるのリリィちゃん~~~っ!!?」
その数分後。
ロッカールームから小走りに逃げたアリアの手には、ラブレターが握られていた。
だが逃げ切れるはずもなく、いつの間にか――
「アリアッ!! その手紙を見せなさいっ!!」
「開けてはいけないっ!! 指紋を残したままに!! 魔力量分析ができなくなる!!」
ノア&レオン、通称“B・B”、爆速登場。
アリア:「どうして来るのぉぉぉぉ!?!?!?!?」
レイフォード邸・作戦室。
机の上には、封筒と開かれた手紙。
ノア:「……綴りは完璧。筆跡も堂々としている。そして語彙選択は、かなり繊細だ。
これは少なくとも“貴族教育を受けた令嬢”の手によるものと見て間違いない」
レオン:「しかも詩的な表現が多い! 一文目から“アリア様の魔力は、私の心を照らす銀の灯火”って!! ポエム力高すぎぃぃぃ!!」
アリア:「読まないでぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
ノア:「……落ち着け、アリア。ラブレターには“相手の真心”が込められている。
それを受け取るかどうかは……君の自由だ」
アリア:「え、なにその急に理解あるお兄様ムーブ!?」
翌日、学園内では既に噂が渦巻いていた。
「アリアちゃんにラブレターが!? 誰よ!? どこの子よ!?」
「まさか男子じゃないわよね!? 女子!? 女子なのよね!?」
「“アリアを好きになるのは仕方ない”けど、私より先に告白するなんて許せない……!」
「おのれぇぇぇ!!(←数名)」
「ラブレター出したの誰!? 正座して名乗り出なさい!!(※生徒会)」
※犯人はまだ名乗り出ていない。
放課後。アリアは再び、ロッカールームへと足を運んでいた。
(……もう一度来てみたけど、やっぱり差出人はわからないや……)
ふと、開いていたままのロッカーに、さらなる一枚の紙が差し込まれていた。
『もし、少しでも私の気持ちが届いていたなら――また、ここで会えたら嬉しいです』
(……!)
一瞬、胸がきゅっと締め付けられた。
(……どんな人かわからないけど、こんな風に“優しく想ってくれる”誰かがいるって……少し、うれしいな)
でも――
「……とはいえ、やっぱり兄様たちには知られたくない……!」
その夜、ノアとレオンは深いため息をついていた。
「アリア、最近なんだか大人びてきたと思わないか?」
「思う。しかもあの反応、手紙の内容に“ほんのり好感”持ってる様子だった」
「どうする?」
「やるしかないな。差出人捜査、第二段階へ移行だ」
「犯人探しって言ってぇぇぇぇっ!!」
──こうして、「ロッカールームのひみつの手紙」事件はしばらく尾を引き、
アリアは机に手紙を入れられるたびに、ドキドキしながら兄の監視をくぐり抜けるハメになるのであった。




