泥んこヒロイン 清水裕美の冒険
晩夏の風がそよぎ、セミの声が遠くで響き合うある日の午後。清水裕美は、学校帰りにいつもの近道を歩いていた。中学1年生になったばかりの彼女は、お気に入りの体操服姿だ。白い半袖の体操服は綿素材で、左胸に校章と黒枠の名札ゼッケンが縫い付けられている。上段に「1-2」、下段に「清水裕美」と黒い文字で書かれたそのゼッケンは、彼女の誇り。その下に履くのはエンジ色のブルマで、サイドに白の2本ラインが走り、左前に小さな名札ゼッケンが付いている。ブルマの上には、長袖のジャージとジャージズボンを重ね着していた。ジャージはハーフジップで、袖に白い2本ラインが入り、左胸に校章とゼッケン。お尻の右側には縫い付けポケットがあり、そこにも名札ゼッケンが付いている。汗を吸った綿素材が肌にしっとりと張り付き、少し湿った感触が心地よい。足元は白いスクールハイソックスをくるぶしの上までしっかりと引き上げて履くのが彼女のこだわりで、学校指定の運動靴に泥汚れ一つない。そして頭には、体操用の紅白帽子。主に綿素材でできたその帽子は、表と裏があり、表が白、裏が赤になっている。裕美は色を表にして、白い面をかぶっていた。帽子のつばが彼女の顔を少しだけ覆い、小柄で華奢な体型をさらに愛らしく見せている。よく小学生と間違われるけれど、男の子っぽいさっぱりした性格が、その小さな体にぎゅっと詰まっている。
近所のため池のそばを通りかかると、いつもと様子が違うことに気づいた。水が抜かれ、普段は見えない池の底が露わになっている。かいぼりが行われているのだ。一面に広がるヘドロの海は、陽光を反射して黒光りし、土と水が混ざった独特の匂いが漂ってくる。近所の子どもたちや大人たちが集まり、外来種の魚を捕まえたり、ゴミを拾ったりしているのが見えた。裕美は立ち止まり、紅白帽子のつばを軽く持ち上げてその光景を眺めた。体操服のハーフジップを少し下げると、首元に風が通り抜けて気持ちいい。ジャージズボンのポケットに手を突っ込みながら、彼女の好奇心がむくむくと膨らんだ。
「ねえ、面白そうじゃない?」
目を輝かせた瞬間、なんでもチャレンジする性格が「やっちゃおう!」と背中を押した。なんの準備もしていない。替えの服も、タオルも持っていないし、靴だって学校指定の運動靴しかない。それでも彼女は物怖じしない。
「ねえ、ちょっと危ないよ! 服汚れるし、やめたほうが……」
近くにいたおばさんが心配そうに声をかけてきたが、裕美は笑って手を振った。
「大丈夫だよぉ! 汚れちゃっても洗えばいいもん!」
紅白帽子を少し傾けて気合いを入れると、勢いよく池の縁に近づき、一歩踏み出した。
「きゃっ!」
一歩目で、足がズブッとヘドロに沈んだ。思った以上に深い。スクールハイソックスが一瞬で黒く染まり、ジャージズボンの裾から冷たい泥水がしみ込んでくる。膝、太もも、そして一気に胸までヘドロに浸かってしまった。ジャージの袖口から泥が流れ込み、体操服やブルマにまでじわじわと染みていく。重たい泥が全身を包み込み、まるで誰かにぎゅっと抱きしめられているみたい。冷たくてヌルヌルした感触が足先から首筋まで這い上がり、紅白帽子の白い表地から滴る泥水が頬を滑り落ちる。でも、嫌いじゃない。むしろ、この感覚がたまらない。裕美の心臓がドキドキして、体の奥からゾクゾクするような気持ちよさが湧き上がった。
「ねえ、すごいよぉ! 気持ちいい!」
笑い声を上げ、周囲の視線も気にせず両手でヘドロをかき回した。泥はひんやりしていて、指の間を通り抜けるたびにヌメっとした感触が残る。ジャージの袖が重くなり、ブルマのサイドラインが泥で埋もれていく。夏の暑さが吹き飛び、解放感が全身を満たすと同時に、胸の奥に緊張感がチリチリと走る。その混ざった感じが、彼女をさらにドキドキさせた。
「ねえ、お姉ちゃん! こっち来てよぉ!」
近くで泥にまみれていた年下の男の子が、裕美に声をかけてきた。小学生くらいのその子は、すでに頭からつま先まで真っ黒で、ニコニコ笑っている。裕美は「うん、行くねっ!」と返事をし、彼の方へズブズブ進んだ。ジャージズボンが泥に引っ張られ、歩くたびにペタペタと音を立てる。紅白帽子のつばから泥水が滴り、視界が少しぼやけるけど、それがまた楽しい。
「何してるのぉ?」
「魚捕まえようとしたけど、遊ぶほうが楽しいや!」
「うん、それわかるぅ!」
二人は意気投合し、外来種駆除や清掃なんてそっちのけで、泥んこ遊びを始めた。
「せーのっ!」
男の子と一緒に、裕美は思い切りヘドロに飛び込んだ。頭までドボンと潜り、全身が泥に包まれる瞬間、心が弾けた。紅白帽子の白い表地が泥の中で浮き上がり、髪に絡みつく。耳元でゴボゴボと泡が弾ける音がして、目を開けると真っ暗な世界。でも怖くない。むしろ、この重さと冷たさがたまらなく気持ちいい。浮かび上がると、髪の毛から泥水がしたたり落ち、ジャージのハーフジップから黒い水が流れ出す。体操服の白い生地は完全に黒く染まり、ブルマのエンジ色も泥に埋もれて見えなくなっていた。ハイソックスは泥の重みで少し下がりそうになるが、裕美はすぐに引き上げて整えた。この泥まみれの服が、自分の一部になったみたい。
「すごぉい、気持ちいいねっ!」
立ち上がり、ジャージの裾をたくし上げて中にもヘドロを流し込んだ。ヌルリとした泥が肌を滑り、腹や背中に広がっていく。ブルマの裾から染み込んだ泥が太ももを這い、綿のショーツにまで到達する。ショーツのクロッチが泥でぐっしょりになり、気持ちよくてヌルヌルした感触が下腹部に広がった。重たい泥が服を引っ張り、まるで新しいお肌ができたみたい。裕美は目を閉じてその感覚に浸った。冷たい泥が体温を奪い、服がピタリと肌に張り付く。ぎゅっと締め付けられる感じと、自由になった感じが一緒に押し寄せて、体の芯が熱くなるような気持ちよさが広がった。男の子も真似して泥をかぶり、二人は笑いながら池の中を走り回った。
「見て! 俺、泥モンスターだよ!」
「私だって負けないもんねっ!」
飛び跳ねるたびに泥が跳ね、顔や腕にべったり付く。紅白帽子の白い表地が泥で黒くなり、ジャージの白いラインも消えていく。自然の匂いとヘドロの湿った感触が混ざり合い、裕美は自分が野生の生き物になったみたいに感じた。この泥にまみれることが、こんなに気持ちいいなんて。服が重くなり、動きにくくなるたび、心がふわっと軽くなる。ショーツのヌルヌルした感触が歩くたびに擦れて、気持ちよさがじわじわと全身に広がった。
夕方近くになり、男の子はお母さんに呼ばれて帰ってしまった。「またねぇ!」と手を振る彼を見送りつつ、裕美はまだ遊び足りない。みんなが引き上げていく中、一人で池の真ん中に立って、ヘドロの感触を最後まで味わった。もっと感じたい気持ちが抑えきれなくて、ジャージの首元からヘドロを流し込む。冷たい泥が胸や背中を這い、ブルマの中まで染み込んでくる。ショーツのクロッチがさらに気持ちよくてヌルヌルになり、体操服が肌に吸い付く。紅白帽子の内側にも泥が染み、頭皮に冷たさが広がる。裕美は目を閉じて深呼吸した。この感覚、全身が泥と一つになるこの気持ちよさがたまらない。服の重さと冷たさが彼女を包み込み、心の奥まで満たしていく。泥にまみれた自分の姿を想像するだけで、笑みがこぼれた。
ため池から出ると、全身にまとったヘドロの重みが一気に感じられた。ジャージズボンがずり落ちそうになり、慌てて腰紐を握る。紅白帽子を手に持つと、泥水がポタポタと滴り落ちる。ジャージを脱いでみると、体操服もブルマも、そして下に着ていた白いショーツも真っ黒に染まっていて、元の色が思い出せないほど。ハイソックスも泥の重みでずり下がりそうだったが、裕美は丁寧に引き上げて整えた。そのギャップにニヤリ。「これ、めっちゃいいよねぇ」と呟きながら、服を絞り出す。ドロドロと黒い水が地面に落ち、ジャージの袖やブルマの裾から泥が流れ出る。重さが少し減ったところで再び着直した。紅白帽子を白い表地を表にして被り直し、泥まみれの自分に満足げに頷いた。
帰り道を歩いていると、ふと尿意を催した。長時間池で遊んでいたせいだろう。でも、全身がすでに泥んこでびしょ濡れだ。裕美は一瞬立ち止まり、紅白帽子のつばを軽く触ったが、「まぁ、いっかぁ」と小さく呟いた。気にせず、そのままおしっこをしてしまうことにした。勢いよくショーツを叩くおしっこが、泥まみれのクロッチをさらに濡らし、温かい感触が一瞬だけ冷たい泥を和らげる。ショーツから溢れたおしっこは太ももをつたって流れ落ち、ハイソックスを通り抜け、靴の中にまで染み込んでいった。運動靴の中でおしっこがチャプチャプと音を立て、足全体が温かく満たされる。それでもおさまらないおしっこは、服に付いた泥と混ざり合い、黄色がかった泥水となって足元に水たまりを作った。地面に広がるその水たまりを見下ろし、裕美は思わずやっちゃったことに驚きつつも、体の奥から湧き上がる気持ちよさを感じてしまった。泥の冷たさと、おしっこの温かさが混ざり合い、ショーツのヌルヌルした感触がさらに強くなる。この解放感と、少しのドキドキが、彼女の心をゾクゾクさせた。「気持ちいいねぇ……」と小さく呟き、頬が紅潮するのを感じた。
周囲の人々がギョッとした顔で裕美を見ていた。ジャージから泥水が滴り、足元には黄色がかった水たまりができ、足音はペタペタと湿った音を立てる。紅白帽子の白い表地から泥が垂れ、顔に黒い筋を作る。でも、彼女は胸を張った。
「これ、今日の冒険の証だもんね。かっこいいよねぇ!」
誰かに笑われても、変な目で見られても、全然気にならない。むしろ誇らしい。泥にまみれた服が肌に張り付き、歩くたびにショーツのクロッチのヌルヌルした感触とおしっこの温かさが蘇る。それがまた、彼女の心を弾ませた。
家に着くと、玄関を開けた瞬間、母が「うわっ!」と叫んだ。父もリビングから飛び出してきて、目を丸くする。
「裕美! 何!? どうしたのぉ!?」
「ため池で遊んできたのぉ! 超楽しかったよぉ!」
驚きつつも、両親はすぐに笑顔になった。母は「そうなのぉ、すごいねぇ!」と興味津々で話を聞いてくれ、父は「いやぁ、さすがうちの娘だねぇ」と笑った。
「そのままじゃダメだよぉ!」
母に大きなビニール袋に包まれ、裕美はお風呂場へ直行した。服を着たままシャワーを浴びると、黒い泥水と黄色がかった水が足元に流れ落ちる。紅白帽子の白い表地から滴る泥水が顔を濡らし、ジャージの袖から流れ出る泥がシャワーの温かさと混ざり合う。いくら流しても流しても、泥とおしっこが混ざった水が尽きないのがおかしくて、裕美は笑いながら体を洗った。ブルマや体操服から滲み出る泥水が足元に溜まり、ハイソックスを脱ぐとそこからも黒い水が流れ出す。靴を流すと、おしっこで満たされていた中身がシャワーと一緒に流れ落ちた。服は洗濯機へ。シャワーの温かさと泥の冷たさ、おしっこの残り香が混ざり合い、不思議な心地よさが残った。この感覚もまた、気持ちよさの一部だった。
夕飯の食卓では、今日の冒険を両親に語った。ヘドロの感触や男の子との遊び、服が真っ黒になったこと。おしっこのことはさすがに黙っていたけど、内心でその気持ちよさを反芻していた。両親は目を輝かせて聞いてくれ、まるで友達みたいに一緒に笑ってくれた。洗濯が終わり、干されたジャージや体操服、ブルマ、紅白帽子を見ると、泥シミがびっしり残っていた。でも、裕美はそれを見て嬉しくなった。
「このシミ、今日の思い出だもんね。また着るのが楽しみだよぉ!」
そう呟きながら、満足げにベッドに潜り込んだ。泥んこの感触とおしっこの温かさが夢の中でも彼女を包み、全身が再びヘドロに浸かるような心地よさに浸った。
裕美にとって、泥んこ遊びはただの汚れじゃなかった。それは彼女の自由と好奇心、そして服と泥が織りなす気持ちよさの証だった。昭和の終わり、子どもたちが外で思い切り遊んだ時代。そんな時間を、彼女は全身で味わい尽くしたのだ。