脱出!生還!そして帰還へと、エピソード48
俺への報酬は、第三種褒章および褒章金となるそうな。
この褒章は一般人に対する勲章に相当し、与えられた褒章種類によって年金が支給されるようになる。
まぁ、各領毎に設けられた褒章は、その領限りだがな。
むろん、国からの褒章もあり、そなちらの方が扱いは上だ。
なにせ国からの褒章は、准貴族あつかいになるんでな。
いや、面倒いからさ、そちらは要らんな。
シャプリニーグ領の褒章は、伯爵領の物なので扱いは良い。
この褒章を付けてラスカランダ子爵領へ行けば、無駄な手続き無しで、御領主様であるラスカランダ子爵へ面会可能だ。
せんけどな。
そして、俺たち雇われ組みの依頼完了証明書および報酬も、ここで渡されたよ。
こちらは伝書鳥にて情報を受け取った際に、文官により処理されたのだとか。
優秀やねぇ。
これで、晴れてお役御免となる、ハズだったんだがな。
「この度の依頼遂行の完了、ご苦労であった。
こちらは儂からの労い金である。
皆で美味い物でも食べるが良い。
して、ダイル。
そなた、儂の元で働いてみる気はないか?」
いきなりの勧誘です。
熊からのダイレクト・アタック!
だが、こちらには優秀なギムと言う名の盾がある!
「御領主様よ。
横紙破りなことは、感心できませぬな。
クランへ属する者を、引き抜くような勧誘はダメですじゃて。
そのようなことをしておると、領から優秀なクランが、皆往んでしまいますでな。
領を廃れさせとう無ければ、お止めくだされ』
そう告げられ、熊が渋い顔に。
「やれやれ。
お館様?
以前からも申し上げております通り、あまり型破りなことを行うは、慎んで頂きとう存じます。
このことは、奥方様と先代様へ上げさせて頂きますゆえ」
執事が割り込んで告げると…
「ま、待て!
分かった、分かった故!
どうかサマンサには、告げるでない!
全く、アレの機嫌を損ねると、色々と面倒なのだ。
勘弁してくれぬか?」
熊さんって、恐妻家なのか?
「しかし…あのような場から情報を持ち帰る腕は稀有。
亜人討伐には、是非とも欲しい人財である。
惜しいな」
そんなん言ってますが?
するとギムさんが呆れたようにな。
「なれば、ダイルの所属クランである【ミミズクのとまり木】へ依頼なされば良かろうに。
っと言うかじゃ。
あそこのクランとは、懇意にされとらんかったかえ?」
そう告げ、首を傾げてる。
確かにウチのクランへの依頼ならば、受けるのも吝かでは無い。
だがクランへ単に依頼すれば、俺へお鉢が回ることはあるまい。
なので、念のためにな。
「クランへ依頼されるのは構いませんが、私を指名しない限り、私へ依頼されることはありませんので」
俺が依頼を受けないって、難癖付けられても困るのでな、それだけは告げとかんとな。
「はて?
それだけの腕があれば、自然とダイルへ依頼が行くのではないのか?」
熊が不思議そうに。
やはりなぁ。
そう勘違いしてたか…
「いえ。
私は、見習い、駆け出しを経て、ようやく一人前と認められたばかりです。
それはこの度、各クランから参加した皆もですが。
なので、そのクラスの依頼が、普通は私へ回ることなど、あり得ませんから」
ったらさ、目を剥いて驚いてたよ。
怖いから止めてぇーだ!




