脱出!生還!そして帰還へと、エピソード41
実は街から使者が出る直前でな。
このタイミングを逃せば、着替えるタイミングを得ることは難しかっただろう。
ハーシスさんが着替え終わってから少しして、街からの使者が馬で来たんだわ。
その侭、街までエスコートしてくれるみたいだ。
揺れる馬車で着替えるのは困難だから、停まってる間に着替えられて良かったよ。
ほどなく城門を潜る。
夜間は固く閉ざしているんだが、わざわざ開けてくれたみたいだ。
うむ、ご苦労。
言わんけど。
門を潜った馬車は、駐屯地へと誘導されたみたいだな。
衛兵詰所ではないのか…
どうやら一喝爺さんが、将官だったことが原因みたいだ。
本来なら、このような些末な遣り取りへ、口を出す立場ではないんだがな。
この爺さん、非常事態にて斥候職の者を街へ放ち、情報収集に尽力していたみたいなんだ。
子飼いの斥候以外に、斥候クランからも雇い入れてな。
まぁ、領が違うから、ウチのクランは関わってないが。
そんでな、真夜中に急使の馬車が街へ着いたとの報告が。
何事!っと、情報を問い正せば、まだ街へ入って無いと。
馬鹿もんがぁ!ってことで、押っ取り刀でな。
つまり、最初から怒鳴られることは確定てな。
でぇ、馬車を降りたら駐屯地の兵舎へと。
爺さんと会うんだろ?って確認したら…
なんで、領主様が居る?
いやさぁ、ハーシスさんの衣服騒ぎとかで、そちらの確認を切ったけど。
その間に、何があったし!
シレッと、全員が謁見の場へと。
俺たちを、巻き込むんじゃねぇ!
そして通された応接室。
爺さんは立ち、御領主様は座って待っていた。
いや、待ち構えていた?
部屋へ入り、直ぐにハーシスさんがな。
「こ、これは!
御領主様!
わざわざ、おみ足を運んで頂き、恐悦至極!」って、跪く。
「うむ、大義ない。
して、火急の用があると、聞き及んでおるが?」
「ハッ!
亜人共目が、件の場所以外からも現れまして。
この情報なしであると、戦術や兵站に留まらず戦略レベルにて影響がでる。
そう町長のご判断にて、急遽ご報告へ上がることになりました。
こちらが、町長から預かりました書簡。
こちらは、私目が纏めました資料にごさいます」
そうハーシスさんが応えると、爺さんがハーシスさんへ近寄り受け取る。
「うむ、大義であった。
して、そなたは貴族であるか?
記憶に無いが?」
不思議そうに。
「滅相も御座いませぬ。
私目は一介の役人に過ぎず、むろん平民に御座います。
御貴族様と同様と判断頂けるは、光栄の極み。
ですが、下賤な私を、そのように判断して頂くことは、汗顔の極みにて」
うん、本当に汗が凄いね。
そんな姿にも色香がさ。
ケッ!
「後なのですが。
資料に纏めた情報は、このダイルより聴き取りしたことであります。
体験者から生きた情報を得られては?」
俺に振るんじゃねぇ!




