鉱洞での採掘依頼、エピソード9
ここには複数の水溜まりがあるようだ。
匂いや濁り具合から見て、飲料水としてもいけそうか?
少々傾斜があり、全ての水溜りから水が流れ込み溜まった水溜りへと。
そこそこの深さがあり、岩の亀裂へと水が流れ出てんな。
解体するには、ちょうど良かろう。
俺は元狩人見習いでな、この手の作業はお手のモノってな。
集落の狩人の1人である叔父へ師事して、狩人を目指してたんだ。
そこへな、叔父の知り合いである、斥候クランの先輩がな。
まぁ今では実質上の上司なんだが…
この先輩がさ、俺は斥候向きだと。
俺のクランは結構有名なクランでな、叔父も一時期所属してたらしい。
まぁ、見習いで挫折して、集落に戻って来たらしいがな。
叔父によるとだ、その時の経験を狩にも生かしており、俺にも指導してたらしい。
知らんかったわい。
で、先輩はさ、叔父が斥候クラン見習い時代の友人で、数年に一度ほど休暇を兼ね、叔父を訪ねに来る間柄なんだとさ。
実はなぁ、俺も会ったことがあるらしい。
いや、知らんがなぁ。
まぁ、その頃はさ、狩のイロハを習い始めでな、イの字も分からん頃だったらしい。
だから、流石に斥候向きかなど分かるハズもなく、スカウトは無かった訳だ。
この世界には専門職の場合はクランが存在し、クランにスカウトされるか、自分から門戸を叩きクラン入りすることで、専門職になる。
商人は商家へ丁稚見習いとして入るが、似たようなものだな。
そんなクランの組合がギルドで、商家組合が商館となるんだ。
まぁ職業毎の調整機関だな。
さらに商工会議所なんてのもある。
まぁ、商人と職人の付き合いは深いからなぁ、その調整なんだろうよ。
流石に詳しくは知らんが。
こんな感じでな、大体は組織に属して暮らしてる。
農家なんかも農家協力組合とかあるし、漁師も漁業協力組合があるかんな。
むろん狩人にも組合があるぞ。
税も組合経由にて納められるからな。
組合どうしの横の繋がりも強いから、領主の横暴は直ぐに国にバレる。
だから無茶な徴税は直ぐにバレ、下手したら領主の座を追われるんだ。
まぁ、そんな感じで組織に所属するんだが、未所属の者も居る。
凄腕の専門職ならば仲介屋へ登録し、仕事を回して貰ってる。
だが、そうで無い場合は口入屋だな。
日雇いの土木人夫などが大半だが、たまに専門性が高い案件の紹介もあるみたいだ。
さらに口入屋から貴族の仕事を紹介され、たまに召し上げられるとの噂も。
本当かいな?
ふぅ、さてっと。
大体の解体は終わったな。
ツラツラと余計なことを考えたが、まぁ良かろう。
解体のリアルシーンを思い描いても、栓なきことだかんなぁ。
解体した森ネズミの皮はザックへと。
2匹は外へ通じる横穴へ。
腐葉土付近に落ちてる、枯れ枝や乾燥した苔などを集め、穴へと。
火を点けると煙がモウモウってな。
穴を落ちてる大振りな石で塞ぐと、外に向けて熱せられた煙が。
良し、暫くは放置だな。
上手く燻製されると良いんだが…
もう1匹は、今から食うぞ。
ザック横に刺してある鉄串を外す。
解体して適度な大きさになってる肉を刺していく。
キノコと、腐葉土から掘り出した芋を挟みつつな。
この芋は美味くは無いが、腹の足しにはなるからな。
後で、さらに掘り出しとくか。