脱出!生還!そして帰還へと、エピソード39
鏡を見たハーシスさんは、自分の姿に驚愕した後、衣服の乱れに気付いたようだ。
慌てて衣服の乱れを整えようと、身なりを確認し…
「なんで、こんなにブカブカなんだ?」って。
そらぁ、それだけ痩せたらなぁ。
して精霊様方?
どうして、こんなことに?
釈明など、ございますか?
で、確認したんだが…
え?
事故?
どゆこと?
どうやら、ハーシスさんは内臓へ疾患があったそうな。
内臓疾患によっては痩せる場合もあるが、太る場合も。
体調を整えていた際に、内臓疾患などの病んでる箇所を修復。
それに伴い、弱った細胞を活性化させたらしい。
そしたらさ、連鎖的に細胞が活性化したんだとさ。
そうなると、当然なことだけどエネルギーが足りない。
だから余分な脂肪分は、真っ先に取り込まれたらしい。
だが、それだけでは足りないため、亜空間からマナを。
こうして、ハーシスさんの体調を、整え終えたら…
うん、そらぁ、仕方ないやね。
しかしなぁ、緩い感じとは言え、自分のサイズに合わない衣服を纏って、領主様へ会えないだろう。
こりゃどうすんべぇな?
てなことを考えてるとな。
「ハーシス殿。
寝起きで申し訳ないんじゃがの。
御者へ状況を確認願えんかのぅ。
ワシらは同乗させては貰うちょるが、関係者とは言い難いでな。
済まんのじゃが、ちと状況を知りとうてな」
そんな風にギムさんがさ。
「良いですよ。
私も状況が知りたかったことですし」
なんかさぁ、イケメンってズルいや。
身動き1つ1つが、サマになってやがる。
いやさぁ、以前と態度は変わらんよ。
なのにさ、動く姿が、妙に決まってんだよ。
ぜってー、イケメンってさ、ズルイよなっ!
そんなイケメンに変化したハーシスさんが、御者へ問い掛ける。
「どうしました?
いきなり馬車が停止し、誰何を受けたと聞きましたが」
したらな、御者が慌てたように。
「これは失礼いたしました。
連絡が遅れ申し訳ありません。
領都へ着きましたことを、ご報告いたします」
うん、間違えでは無いんだがなぁ。
ほら、ハーシスさんが、困惑してるぞ。
「揶揄っています?
今は…夜中の2時50分ですか…
止まってから、それなりの時間が経過しているらしいですね。
となると、2時半前後頃に着いたことになります。
いくら早くとも14時、普通なら16時の到着では、ありませんでしたか?
いくらなんでも、早過ぎませんかね?」
ほら、突っ込まれた。
「いや、それなんですが、私にも分からんのです。
馬車が走る音が絶え、獣の襲撃が一切ない。
こんな道程は経験したことがなく、不審に思っておりましたら…」
「着いていた、と?」
「はい。
そうとしか…」
御者が応えるとな、ハーシスさんは顎に手を当て、しばし考える。
そんな仕草がサマになりやがる、けっ!
「こちらも、不可解なことが発生していますが、今は良いでしょう。
それより、領都側から連絡が来たら、教えてください」
「かしこまりました。
では、そのように致します」
てな遣り取りの後、自分の身形を確認してるな。
そんなハーシスさんを見てギムさんがな。
「のぅ、ダイルよ。
お主と、今のハーシス殿の体型は似ておる。
なんとかならんか」
いや、ギムさん?
なんつー無茶振りやねん!




