脱出!生還!そして帰還へと、エピソード38
城門側では寝起きのお偉方がさ、喧々諤々ってな。
深夜で熟睡してるとこを起こされ、皆さん非常に機嫌が悪いみたいだな。
最後に入って来た方が、皆を見て呆れる。
「貴卿らは何をしておる?
急使殿を待たせておると聞いたが?」
そう老紳士が問い掛ける。
「ハッ!
閣下!
夜分にて、御領主様へお伝えすべきかを…」
「馬鹿もぉーん!
先に何故、急使殿を迎え入れんのだっ!
会わねば、状況も確認できまいがっ!
何をしとる!何をっ!」
うん、大一喝ですなぁ。
一喝され青くなった面々は、飛び上がるように動き出す。
ようやく入れそうだな。
さて、そろそろ…ハーシスさんを、起こすかねぇ。
小太りなハーシスさんは、傍目からも疲れているのが分かる。
ゆえに、寝かせといてやりたいが、そうも行かないだろう。
まぁ、お疲れなんだから、無理に起こすのは可哀想かな。
ここは、あれだ。
生命の精霊たちに、体を整えさせながら、優しく起こして差し上げよう。
なんて優しいんだろ、俺。
そう思った俺は生命の精霊さん達へ、サーシスさんの体調を整えながら、優しく起こしてくれるようにお願いを。
いや、生命を司る最上位精霊様と精霊王様?
あなた方へは、お願いしてませんが?
亜空間からの干渉は、ご遠慮願いたく。
え?
手遅れ?
何が?
中位精霊さん達が、呆れてるんだが…なにがあったし!
思わず、ハーシスさんの方を見て確認を。
って、誰?
小太りで無くなり、スラリと細マッチョな男性が。
ふっくら穏やかな顔が引き締まり、凄い美男子へ。
いや、劇団からスカウト来るレベルじゃんね。
そんなハーシスさんが、緩くなった衣服を軽く肌けさせながら起きて来た。
「う〜ん。
よく寝れたなぁ。
こんなに体が軽いのは、何時以来だろ?
ん?
朝になってない?
真っ暗なんだけど…馬車は止まってるのか?
どう言う状況なんだろ?」
軽く混乱しているようだが、起きたハーシスさんを見て、俺たちも大混乱ってな。
「ハ、ハーシス殿、で、間違いないか、のぅ?」
ギムさんが、戸惑ったようにな。
「ギム殿?
それは、どう言う意味で?」
不思議そうだ。
リンが、ポーっとなっとるのは、仕方あるまい。
軽く肌けた衣服から、引き締まった肉体がチラッとな。
軽く髪を掻き上げ、無意識の流し目でこちらを。
うん、狙ってね?
したらさ、リンが鞄から何かを。
あれは….手鏡か?
流石、リンだな。
身だしなみ用の手鏡を、鞄へ入れてるとはな。
それをハーシス様へと渡しているな。
で、受け取ったハーシス様は、戸惑いながら手鏡を受け取り…
「なんで、手鏡を?」って言いながら、鏡を見て…
「え?誰?これ?」
うん、戸惑ってらっしゃる。
まぁ、そうなるわな。
しかし、今から御領主様へ会うのに、サイズが合わない衣服を纏ってでは不味い。
どないしょー




