脱出!生還!そして帰還へと、エピソード37
ん?
っと、領都へ着いたようだな。
御者が現れた領都の城壁に驚いている。
慌てて馬車の速度を落とすため、馬を御すんだが…
そんなことでは、加速された馬車は止まらんよ。
なので、俺が魔術でフォローを。
いやさぁ、実際は俺が制御してるんだけどな。
フローティング状態を徐々に解き、馬車を接地。
馬へ急激な負荷が掛からないように、そーっと。
それでも馬は驚くが、そこは生命精霊へ任せる。
別名、丸投げとも言う。
軽量化の魔術は維持した侭にし、慣性を魔術にて、ゆっくりと中和ね。
ほどなく、馬車は城門前へと。
したらさ、城門にて騒ぎが。
まぁなぁ。
音もなしで、いきなり馬車が城門前に現れたら、そら驚くだろう。
「何者だっ!」っと、城門側からの誰何の声が。
結構デカいな、をい。
皆が起きちまったじゃねぇか。
「何事じゃ?」
寝起きのギムさんが、不審げに。
「いや、馬車が止まったと思ったら、何か怒鳴られてますね。
なんでしょ?」
いや、知ってるよ、状況はさ。
でも素直に伝えたら、なんで俺が知ってんだ?ってなるじゃん。
やだよ。
「ふむ。
争いごとは、起こっておらぬようじゃな。
ここは様子見じゃ」
そう告げ、腕を組み、ドッシリと座り込んじゃったよ。
頼もしいと言うか、なんと言うか…
しかし…ハーシスさんは、大物やね。
この騒ぎの中、全く動じて無いぞ。
まぁ、寝てるんだけどね。
ハーシスさん以外は起きてんだが…
まぁ、町のお役人様だからなぁ、仕方ないか。
さて、御者と城門側の方なんだがな、こんな遣り取りがな。
「こちらは、ベラルーシ町からの急使である!
町長ザギト様からの使者を乗せておる!
開門願いたい!」
そう返すと、しばし騒めいた後でな。
「承った!
しばし待たれよ!」
そう返し、城壁側は沈黙。
っても、裏では騒動になってたがな。
上の人間が呼び出され、領主様へ報告するかを検討。
このような真夜中にも関わらず、急使が来たのだ。
即座に対応が必要では?っと。
ああ、そうそう。
今は夜中の2時半くらいだな。
本来は、早くて今日の昼2時。
普通なら昼の4時に着く予定だったみたいだな。
あ、ついでにさ、平民が時を知る方法を告げておこう。
貴族連中や豪商クラスなら、時計という魔道具を使用し、時を知る。
だが庶民には、そんな高価な代物を持てるハズもない。
だからさ。
教会にて鳴らす鐘の音にて時を知るんだわ。
朝の4時から夜の8時まで、2時間置きに鐘が鳴るんだ。
その鐘の音で、時間を知る訳だな。
ただなぁ、村などには教会がないとこもあるし、教会があっても鐘が無い場合もな。
だから村では時間を気にせず、太陽の動きで暮らしてんよ。
日が出たら起き、日が沈んだら寝る。
雨が降ったら、お休み、ってか?
のんびりして良い?
いやいや、日が出てる間は、ズッと畑仕事や家畜の世話だが?
雨の中で無理に畑仕事すると、下手したら体を壊す。
だから畑の見回りと、家畜の世話のみにしてんだ。
それを、彼らは休みってるだけだからな。
町の人間には勤まらない仕事さね。




