脱出!生還!そして帰還へと、エピソード30
しかし、デザートワインって、ブドウ造りからかぁ。
大変なんだなぁ。
だから、こんなに美味しいんだな。
え?
俺が飲んでるのは、特別製?
亜空間の固有種から得た、ブドウから造ってる?
またぁ、なんだよ、その固有種ってさ。
カメ型植物で、草原を行き来しながら土壌から栄養を得て、水場から水分を補給する植物らしい。
いや、ちょと待て!
色々とおかしいやろっ!
そもそも、なんでカメやねん?
え?
創った精霊たちが、ラムラゾール好きだったから、カメの形にしたって?
そなの?
自由やねぇ。
んでぇ、自由に歩かせたら世話も不要だし、自分で栄養を蓄えるからと…
さいですか。
体に這わせた自分の蔓から、栄養を凝縮した実を鈴なりにするそうな。
その果汁はシロップに相当するらしく、非常に甘くカロリーも高いと。
それにて造られたワインは、一杯以上飲めば過剰摂取?
ちょと、待てやぁ!
俺、さっきから、何杯飲んだ?
やべっ!
『だから、さっき説明したであろうに』
いや、いくら圧縮エネルギーとして蓄積できるにしても、限界ちっうのがあるでしょうにっ!
『いや?
0.001%も貯まってはおらぬが?』
へ?
そうなの?
『ドラゴンブレスが3万発ほど、放てるていどであるな』
はい?
『炎龍王と呼ばれたドラゴンのブレスを、その程度の数にて放てるであろう』
いや、ちょっと待って、クロード様。
炎龍王って、御伽話に出て来るヤツだよね?
古代の城塞都市を、ブレス一発で消し飛ばしたと言う…
『おおっ!
ダイルの時代にも伝わっておったのだな。
祖父の代に、少し遠方の国で発生したことでな。
当時は、我が国へ現れた際の対応に追われたそうな』
あれ、実話だったのね。
こわぁー
『しかし、話しながらも、手は止まらんのだな』
だって、美味いんだもん。
熱して溶けたチーズ。
これへ、バケットを切り分けた品を付けてな。
トローリ蕩けたチーズ様を絡めてから、口に。
ほふ、ほふ、ほほふっ!ってさ。
濃厚でクリーミー、適度な塩気。
それが絡まったバケットを噛むと…あぁ…
逆に、凍るほどに冷たいチーズ液。
こちらもトロトロなんだが?
どうやら亜空間特有の生き物の乳から造られたチーズらしい。
極寒空間でも凍らないサラサラの乳を、特殊な技術にてチーズへと。
ただ、常温にて溶けるため、保管管理が難しいしならしい。
この冷たくとも蕩けるチーズをさ、バケットへ絡めてから口へ。
ハー、ホフ、ハフ。
熱いんじゃ無い、冷たいんだ。
氷を口へ入れた感じか?
熱い感じと似るのは、何故だ?
その他のチーズも個性的でな、実に美味い。
亜空間固有種のチーズは、濃厚でドッシリしたのから、サラリと潔いのまで、様々だ。
しかしさぁ、これ、フロマージュだけで料理として完成されとらん?
バケットをパスタにして、熱いのと冷たいのをヤッたんだがな。
これも、なかなか。
ハムで巻いたヤツや、竹輪とやらに入れた物。
野菜に巻いた物もな。
実にバラエティ豊富だ。
なのに、あれだけ有ったフロマージュは、どこ行った?
っかしい、ぞっ!っと。




