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脱出!生還!そして帰還へと、エピソード27

口直しが済むと、メインとなる肉料理である。

あれだけの料理が続いたんだ、期待は否応無しにな。


まぁ、提供する側は、それだけハードルが上がると言うことだ。

だが、ここのシェフならば、期待に応えてくれることだろう。


そして、配膳…されない?

なんだ?


給仕ワゴンを押すウェイトレスを引き連れ、コック帽を被ったダンディな紳士が登場。


「料理は、お気に召されましたでしょうか?

 (わたくし)、当レストランにてシェフを任されております、ターク・サワイアと申します。


 本日のメインといたしまして、熊の手を、ご用意致しました。

 こちらを、ここで切り分けさせて頂き、仕上げさせていただきます」

そんなことをな。


「はぁ?

 熊の手ですか?」


いや、なんで熊の手?


「ああ、ご存知ありませんでしたか。

 熊の手と申しましても、どの熊でも良い訳では御座いません。

 ハニーベアー。

 その利き手に限定されます」


どう言うことだ?

意味が分からない。


「確か…ハニービーは、ダイル様の世界から取り込まれたと、聞き及んでおりますが?」


ん?

確かにハニービーは、俺たちの世界に存在するミツバチだな。

ただな、大きさが異常。

狼と変わらない大きさと言えば、分かるだろうか?


性質は大人しいのだが、下手にチョッカイ出すと群れで襲って来る。

巨大な毒針に刺されれば、命が危ういな。


だが、その巣へ溜め込まれた蜜は、極上。

しかも花毎に蜜を溜め込む部屋を分けており、1つの巣で複種類の蜜が手に入るのだ。

故に、ハニービーの巣を狙い命を落とす者が、年に何人もな。


確か、亜人共が溢れた森にも、幾つかの巣が有ったハズだ。

亜空間へ巣毎、取り込んだと思う。


「確かに、そのような記憶はあるが…それが?」


どうしたと、言うのだろうか?


「ハニービーへは、ガーディアンが付きものでございましてな。

 ハニーベアーは、そんなガーディアンとなる生き物なので、御座います。


 大概は(つがい)にて巣を守っておりまして、守りながら子をもうけ育てます。

 ですが育った小熊達は、巣立ちとして巣を追われるのです。


 そんな小熊たちも、巣にて育てられていた際には、ハニービーの蜜を食べております。

 そして食べる際には利き手にて、蜜を掬ってで御座いますな。


 そんな小熊の肉は非常に柔らかく、しかも乳と蜜にて育てられたために臭みもなく極上となります。

 特に、蜜が染み込んだ利き手。

 コチラの味わいは食材として、最上級となります。


 この熊の手をオープンにてジックリと焼き上げ、その際に溢れて出た肉汁をさらに掛け回し焼いておりまして。

 ソースは、その肉汁をベースに仕上げておりますれば、どうぞ、ご賞味を」


そがぁな事を言うんですが?

聞くだけで、ヨダレがぁっ!


シェフが肉を切り分け、それを皿へと盛る前に給仕ワゴンへと乗せている卓上コンロのフライパンへ。

酒…ブランデーか?を振り掛け、火を点ける。

フォイヤァー!

うん、分かってるって、フランベでしょ。


そして皿へと。

フライパンへ、用意して来たソースを。

軽く混ぜ合わせてから皿の肉へと。


なんかさぁ、甘く香ばしい肉の香りが広がってるんですがっ!

その皿が、俺の前へ。


このシェフは、アレだ。

香りで攻めて来るタイプだな。

そして、香りを嗅いだ時点で、客は籠絡(ろうらく)されてしまうと。

今の俺のようになっ!


カトラリーで肉を切り分け、口へと。

肉に臭みが全くない。

いや、乳?の風味とハチミツ?…


香草と香辛料は控えめだが、味と風味をアシストしている。

そして、肉質は柔らかい。

ホロホロと口の中で解けるのだが、しっかりと噛んだ食感がな。


で、その食感に魅せられ噛むと旨みが、じわりぃ、じわり、っと。

何時までも噛んでいそうに。

だが、ある程度の間を噛んでいると、溶けるように口内から消える。

そうなると、次が…


さらに、この料理にはヒルボディな赤ワインが、良く合う。

肉のポテンシャルを引き上げ、さらに己れの味わいも合わせて来る。

これこそ、マリアージュだな。


でぇ、俺の肉、何処行った?

いつの間にか、消えてるんですが…

またかぁっ!

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