脱出!生還!そして帰還へと、エピソード10
村方面から馬車が到着したことで、町では騒ぎになっちまったな。
町の門兵の検閲で、全員の身分が調べられる。
御者は駅馬車組合の者だ。
だから当然、通行可能。
俺たちは、各クラン発行の身分証を携帯している。
その証明書にて通行可能だ。
別の国では、入町税を取るシステムを採用してる。
その場合、物の流通が阻害され、町が廃れる危険があるそうな。
それを知ってる俺らの国では、都町村へ入る場合の徴税はしていないのさ。
スンナリと門を潜った後、ギムさんは役場へと。
俺とソリタも同行となった。
いや、ソリタは魔術師だから賢いんで分かるが…なんで俺も?
「主ゃぁ、坑道奥へ行ったんじゃろ?
坑道の穴ちゅうヤツのことと、坑道内のことなんかをのぅ。
それにじゃ。
最近、色々と鋭いちゅうか、聡くなっちょるでな。
頼りにしちょるけぇの」
そんな感じで依頼されては、断れませんがなぁ。
えへ。
ん?
単純?
ほっとけっ!
門番詰所にて、待機中の門兵へ町役場の場所を尋ね、教えられた場所へと。
町の行政を司る場所だから、町の中央かて思いきや、意外と門に近い場所にあったよ。
『それは、そうであろうな。
領主殿との遣り取りなどを考慮すれば、領都へ向かう街道側の門から、離れた場所へは建てまい。
とは言え、町中から離れ過ぎても不便であろうな。
ゆえに、この場所ていどが、妥当であろ』
ふぅ〜ん。
役場一つ建てるのに、色々考えてるんだなぁ。
初めて知ったよ。
町役場に着いて入ったんだが…何やら慌ただしいな。
どったんだろ?
え?
調べないのかって?
ヤダよ、面倒くさい。
ただでさえ亜人共を監視してんだぜ。
村や街道へ出ないように間引いたりな。
むろん狼や熊などが、見付け易いように配慮しながらだ。
腐敗して疫病なんぞ発生したら堪らんからな。
そんなんに、リソースを裂かれてからさ。
とてもではないが、余分なことはしたくないんだよ。
そして役場だが、ゴタゴタしているみたいだけど、キチンと機能はしている。
受付へ向かうと、普通に対応して貰えたよ。
「どのような、ご用件でしょうか?」って、ニッコリ。
うん、受付の人って、美人さんが多いね。
「うむ、報告をな。
ワシは採掘クランの者でな。
ここの領主様に採掘許可をいただき、廃坑の採掘を行って来たとこじゃ。
採掘に対しての報告義務はないんじゃがの。
ちと、坑道が困ったことになっておってな。
これに対しては、報告せにゃならんと思うたんじゃわい」
ギムさんが告げると、受付嬢は戸惑ったようにな。
「困ったことですか?
それは、どのような事でしょう?」
そう問われたので。
「実はのぅ。
廃坑へ亜人が湧いちょってのう。
ワシらも襲撃を撃退しつつ、なんとか逃げ帰って来たんじゃわい。
廃坑に近い村へは町で報酬を貰うことにし、無償で教えて来たでな。
詳しい話しをするかは、対価しだいじゃて」
ギムさんが告げ終えると、受付嬢が頷き告げる。
「かしこまりました。
この件に付きましては、私では判断付きかねます。
ですので、上へ伺って参ります。
少々お時間いただけますでしょうか?」っと。
「うむ。
頼んだわえ」
そうギムさんが応えを。
それを確認した受付嬢が席を立ち、奥へと。
さて、しばし待ちますかね。




