鉱洞での採掘依頼、エピソード6
台座に近付くと、台座の天板から上へ指輪が浮いていた。
いやさぁ、何で浮いてんだ、これ?
ホノカに光ってるし…訳分からんぞ?
ふよふよって感じで浮いてる指輪へと、恐る恐る手を伸ばす。
スンナリと手が届き、指輪に触れた。
うん、触れるだけなら問題ないみたいだな。
なので指輪を摘んで引き寄せる。
うおっ!
台座の天板が発光!
なんぞ!
摘んだ指には指輪がな。
そして取ったハズの場所にも指輪が…
いや、訳分からん?
指輪が増殖した?
どう言う絡繰なをだぁ、これ?
訝しく思いつつ、取った指輪の確認を。
指輪の表面には数箇所の窪みが存在し、その内の1つへ石が嵌っていた。
灰色の丸い石だな。
多分、球体だろう。
爪などで固定されてないにも関わらず、指輪から剥がれて落ちる気配はない。
どうやって、くっ付いてんだぁ、これ?
シゲシゲと指輪を観察してみたが、灰色の石が不明な技術で張り付いてる…あ、膠か何かで接着してんのか、これ?
そう考えると不思議では無いか。
と、なればだ。
益々、何のヘンテツも無い安物の指輪にしか見えない。
これが選別の指輪ねぇ。
有り難みもクソも無ぇな。
でも、人を殺す殺人指輪らしい。
本当か?
いや狼人族が、さっき死んだばかりだったか。
そう考えると、嵌めて素質が無ければ死ぬんだろーなぁ。
嵌めたく無いなぁ。
けど、嵌めないと、先に進めないし…
踏ん切りが付かず、暫く悩んだが…ここは危険地帯。
あんまり、のんびりと悩む時間も無い訳で…
ええいっ!
男は度胸!女は愛嬌!
昨今は逆らしいが、漢は度胸と決断だっ!
気合いを入れて人差し指へと指輪をな。
こんなんエンゲージリングにゃしたくもねぇからさ、間違っても薬指にゃ嵌めないかぞっと。
で、指輪を嵌めたんだが…異常は無い、無いよ、な?
確か…狼人族は直ぐに死んでたハズだ。
まぁ、遠くて何をしてるかは分からんかったけどさ。
入って直ぐくらいに死んでたからなぁ。
俺が死ぬなら、もう死んでるだろうさ。
呆気なかったが、なんとか生き残ることができたようだ。
壁文を、もう一度確認して…
あら?
古代文字、読めるわ。
そう言やぁ壁文に、指輪嵌めたら古代語が読めるって書いてあったか。
で、古代文字だが…
《警告。
本施設は特定職の認定施設である。
認定機関にて認定されぬ者は引き返すように。
資格なき者が指輪を嵌めた場合、即死するため行わないことだ。
さて、認定所にて説明を受けた諸君らには、何の上位職認定試練かを説明する必要はあるまい。
先に進め。
扉には指輪が嵌まる窪みがある。
そこへ指輪を押し付けると扉が開くであろう。
扉には結界が施されており、指輪装着者以外は潜れない。
同行者は死にたく無ければ引き返すことだ。
では諸君の健闘を祈る》
そんなん書かれてますが?
いやさぁ、職付くならクランしょ?
まぁ、スカウトされないと、入るのは厳しい。
でも門戸を叩いてクラン入りした者も居るしなぁ。
そん風に、職に付くのはクラン入りが常識なんだが…上位職ねぇ。
なんぞ、それ?