鉱洞での採掘依頼、エピソード38
結局はさ、欲望には勝てず。
人間、欲望には弱いのさ。
さて、左端から2番目の台座なんだがな、何やら透過の力を得られるらしい。
移動強化の珠を指輪へ付けたからか、それとも付けて点滅してた珠を触ったからなのか…
台座へ刻まれた古代文字が、読めるようにな。
そして台座には、次のような文がな。
《【透過能力】
以下全ての力、もしくは、いずれかが手に入る可能性がある。
ただし、素質なき者には付与されぬ。
付与されない場合、素質なしにて即死する。
・物質透過:壁や地中など、物質を透過し、陸上のように動ける。
・水透過:水中や氷、泥水の中を、陸上のように動ける。
・透視:障害物を無視して物を見れる。
・透聴:障害物を無視して音を聞ける。
・透臭:障害物を無視して匂いを嗅げる。
・全周囲型気配察知:障害物を無視し、全方向の気配を察知できる。
全て効果時間と再使用時間が存在。
物質および水の透過は、身に付けた物にも適応される。
物質透過時に効果が切れると即死するため、注意が必要である》
ほぅ、透過能力?
障害物を無視して移動できる、だとぉ?
マジ?
そんなんさぁ、斥候職なら、皆欲しいに決まってんだろ!
え?
透視が良い?
なんで?
しかしさぁ、必ず全てが手に入るとは限らないのかぁ。
水透過や透臭のみ手に入ったら泣くな、これ。
う〜ん、なんてギャンブル?
これに命を懸けるのかぁ。
右端だけ貰えませんかねぇ。
思わず手を出し、弾かれる。
ダメかぁ、クソっ!
仕方ないから、左から2番目の台座から珠を取る。
ジィーっと、珠を見る。
思わず、ため息。
渋々と珠を指輪へと。
……… ……… ……… セーフ!
今、生きてるぜぇ!俺ぇっ!
珠が点滅してるな。
早速、珠に触ると…またかぁ!
痛いんですがぁ!
この激痛、なんとかならんの!?
しばらく、のたうち回る、俺。
ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ。
痛、かっ、た、ぜえっ!
でぇ、どんな能力がさ、手に入ったのやら。
でな、今まで散々不親切だったのに、何故か台座に検査機能が付いてるらしいんだわ。
つまかさぁ、その説明文、痛みが引いたら見えるようになったんだが…
これってさぁ、珠嵌めた後も、点滅珠触って適合しなかったらさ、死ぬんじゃね?
そうじゃ無いと、痛みが引いた後に、適合検査の説明文が出るのがなぁ。
まぁ終わったことは仕方ないか。
さてっと、俺の適合した能力はっと…はぁ?全部?何で?
ん?
譲渡記憶さん?
何やら状況へ当て嵌まること…
あ、なる。
譲渡された記憶には、各々の経験や修練状態に対する記憶も。
それらも適合判定に、反映されたのではないかと?
つまり、記憶譲渡なかった場合、適応なしだったかも?
マジかぁ。
そうなると、記憶譲渡が発生するか分からんが、亡霊さん解放をした方が良いやもな。
そう考えた俺は、死体から指輪を外し始めるのだった。




