鉱洞での採掘依頼、エピソード33
森の移動を再開して暫く経った頃、ネックレスの精霊たちが騒いでる気配が。
なんだろ?って思って辺りを見回すと、一本の若木が倒木に挟まれて枯れつつあるのがな。
これ…精霊が宿ってる?
精霊ってさ、宙に漂ってる微精霊や、物に宿る小妖精が一般だ。
ネックレスに宿るのは、明確な意思を持っては無いが、ある程度の力を持った中位精霊だな。
ここまで育つ精霊は珍しいらしい。
そう知識さんがな。
で、枯れつつある若木には、樹木の精霊が宿ってんな。
どうやら、倒木ヘ宿っていたみたいなんだが、寿命が近いから種子に宿り、若木まで育ったところだったらしい。
まさか自分が宿ってた木に潰されるとは、思って無かったんだろう。
まぁ、意思は芽生えて無いから、考えてはいなかったんだろうが。
ここまで育った精霊が消えるのは忍びない。
ならばダメ元で、精霊が宿るネックレスを若木へ近付けてみるか?
もしかしたら、樹精霊が宿るやもしれんからな。
そう考え、ネックレスを外し若木へと近付ける。
おや?
すんなりと、樹精霊がネックレスへ宿ったな。
ん?
ほーっ、なになに?
別種でも精霊同士は惹かれ合うのか。
同種精霊の場合は統合され力を増すらしく、より宿り易くなるらしい。
へー
コレってさぁ、自我が芽生えてもなのかね?
まぁ、流石に、そこまでは受け取った知識には無かったな。
あ!
精霊が抜けた若木が折れた!
おそらくだが、宿っていた精霊が若木を支えてたんだろう。
精霊が消えたことで、耐えられなくなったんだな。
樹精霊がネックレスへ宿ったお陰で、植物を操ることが可能にな。
トレントだって、もう怖くない。
制御できるからさ。
品種改良だって可能なんだとさ。
トレント果実を食べた後に残った種。
アレは捨てずに持って来てる。
さほど嵩張らないし、調薬の原料にもなるからだ。
ん?
薬が作れるのかって?
元から簡単な調薬は行えてたよ。
斥候職イロハの一つだな。
だが知識を得た今は、かなり高度な調薬も可能だ。
薬草を見分けるのにも、その知識が役に立ったよ。
さらに樹精霊さんが仲間になっただろ。
より植物に対して分かるように。
現に俺が知らなかった薬草も、かなりの数を見付けられるようにな。
近くに見落としてた薬草が、こんなにあるとはなっ!
それよりトレントの種だ。
あの気やマナを吸収する能力を除去可能らしい。
ならば種から育てるとだ、トレント果実が手に入ると。
っても、俺が育てるのはゴメンだしなぁ。
迂闊に明かすと奪われかねない。
うん、保留だな。
そんなん思いつつ、ついトレント果実を取り出し齧る。
これ、あっと言う間に無くなりそうだな。
だがな、美味すぎるのが悪いのだよ、うん。
食べ終え、次の果実へ手が出そうなのを我慢!
俺は出来る子ってか!
ん?何々?
栄養と水を種に与えれば、果肉や皮を再生できる?
アナタは神かっ!
いや、樹精霊様でしたね、うん。
コレで、果実園を作る必要も無くなったな。
有難い?
はい?
魔術でマナを集めて種に与えれば、種へ与える栄養の用意は不要なんですか?
マナって、宙に漂う水色の靄だよね?
試しにさ、水色の靄と、ついでに黄緑の靄を種へと。
うわっ!
見る見る内に、果肉と皮が再生した!
試しに食してみると…以前より美味かったです!
黄緑靄である微精霊を混ぜたのが良かったみたいだ。
これでトレント果実を、食べたい時に食べれるようになったぜっ!




