鉱洞での採掘依頼、エピソード３１
トレントの果実って初めて食ったんだけどさ、これ、癖になる美味しさてぇヤツだな、うん。
皮ごと食べてるんだが、皮は薄い。
歯を立てると、プツリって切れるんだが、この感触がなんとも。
皮下の果肉はプルリとした食感でなぁ。
口に咥えると、プルプルって口内をくすぐる。
そして淡い甘さと、えも言えぬ香りが口の中に広がってなぁ。
咀嚼するとだ、プツ、ぷるり、フルリってよぉ。
咀嚼が止まらんわい！
そしてたらさ、果肉から果汁が迸ってなぁ。
口ん中を蹂躙ってね。
これ、果実の外側の話しなんだぜ？
分かる？
そう、食べ進めると、お次はシャリシャリってぇ食感のへとな。
爽やかな甘さに、清々しい香りへと。
サラリとした程よい甘さで、華やかな香りを放ってる外側の果肉の味とは喧嘩しない。
互いが引き立て合うてぇのかね。
二口で二度美味しいってか？
このビックリ果実なんだが、まだ奥がさ。
シャリシャリした果肉の先、そこにはネットリと甘い果肉が潜んでてなぁ。
コイツが甘いんだが…
イヤな甘さでは無い。
だが、痺れるほどの甘さで、華やかたる香りに陶然とな。
いっけんクドくなりそうだが、外側の果肉が、それを許さない。
もうねぇ、腹いっぱいなんだが、それでも食いたくな。
これ、絶対に中毒性あるよな。
持ち帰りたいが、流石に荷物になるから無理だ。
しかも日持ちしそうに無いからなぁ。
そんなん思いながら、咀嚼は止めない。
旨し！
丁寧に食べ尽くし、味わい尽くした訳だが…この果実は木に実ってる時点の方が香るんだわ。
こんな芳しき香りを嗅がされて我慢できるハズもなく、次々と動物がさ。
狩り尽くさないのか？これ？
そう思ってると、一定数狩ったら狩らなくなったよ。
そうなると、現れた生き物たちは果実を得られる訳で…
うん、貪ってんなぁ。
先ほど吸収された生き物たちは生け贄っう訳かな？
その犠牲があって、初めて食えると。
そして食ったら魅了される訳で…うん、次の生贄候補やね。
トレントかぁ。
この果実は魅力的ではある。
あるが、木自体が危険すぎるな。
栽培なんぞすれば、栽培者が吸収されちまわっ！
これ、収穫自体が無理だろ？
でもさ収穫しても果実は数日経つと、再び実るからなぁ。
魅力的ではある。
しかし下手に近寄ったら死ぬから。
まぁ、魔術結界で身を守れば大丈夫らしい。
魔術結界を張れる魔術師は、高位の魔術師となる。
まぁ、知識譲渡してくれた亡霊たちの時代は、それ程でも無かったようだが、今の時代では稀有だろう。
そんな魔術師にトレント農家をしろと？
無茶だろ、それ。
そうなると、自然に生えたトレントから収穫するしかない訳で…
それさぁ、トレントの知識を持ち、トレントを見分けられ、トレントに襲われずに、果実を収穫するっうことだよな。
トレントって、辺りの木々に擬態する感じで生えるみたいなんだわ。
目視で見分けるの、無理じゃね？
気察知可能な達人に見分けて貰うのか？
付き合って貰えないだろ、それ。
っかさ、外にもトレントは自生してるらしい。
犠牲者も居るんだろーなぁ。
植物由来とか、動物由来の物は、マナとして吸収してしまうらしい。
だが、金属などは無理。
つまり、木々の周りに金属製品が、ばら撒かれてたら要注意っう訳だな。
俺は初耳なんだが、知られてないのか、トレント。
