鉱洞での採掘依頼、エピソード26
扉向こうの状態を伺った後、扉の窪みに指輪をな。
位置は同じだな。
ゴゴゴゴゴッって扉が上がる。
通り抜けたら、素早く移動だな。
やはり落ちるかぁ。
背後で轟音がな。
ガンラはシャウラスと違い、音に反応して押し寄せたりはしない。
だからさ、あの時と違って余裕はあるよ、うん。
ただアチコチにガンラが居るみたいだ。
多くね?
ガンラもマナ感知できるみたいだらさ、慎重に進まないとな。
っ!
ガンラのマナ感知範囲内へ入ったかも!
身を潜めても、マナ感知からは逃れられないからな。
まぁ、ガンラの移動速度は遅い。
十分に逃げられるだろうさ。
?
気付かれた様子がないな。
不思議に思い、ガンラ後方から近寄る。
これだけ近付いても気付かれないとは…
おそらくだが、マナ感知阻害能力も得られたのかと。
そう考えると、生命探知や気察知も阻害できるのか?
もしそうなら、斥候職としては破格な能力と言えるな。
ん?
前方に生命反応?
あ、ネズミかぁ。
どこへでも入り込むな、コイツらってさ。
あらら、ガンラのマナ感知に引っ掛かったかぁ。
ガンラが、ゆっくりと漂いながら、ネズミへと。
ネズミもガンラへ気付くが、様子が変だ。
逃げるのではなく、フラフラとガンラへとな。
あぁ、これが誘惑の効果かな?
近付いて来たネズミからマナを、ガンラが吸い取る。
うん、触手は、そのためなんだね。
マナ感知で感知した感じでは、ネズミからマナが吸い取られている。
っか、ネズミ…干からびてきてね?
あっ、消滅した。
なるほど、マナを全て失うと消滅するんだな。
コェー!
死体も残らず、存在自体が消滅ってアータさぁ、イヤ過ぎるんですが。
絶対、ガンラに見付かっちゃぁなんねぇなっ!
このエリアは広い洞窟に、無数の岩柱が立ってる感じなんだわ。
岩柱に隠れつつ移動してんだが、微妙な位置にガンラがな。
通りたい所を塞ぐ感じで漂ってるからさ、たんびたんびに迂回をな。
時間が掛かって仕方ないぜっ!
ようやく、出口らしき洞窟がな。
終点か、ガンラのエリアからの脱出かは分からんが、消滅の危機から脱せられるならば、どちらでも良いわい!
でな、そんな洞窟の前にさ、ガンラがたむろしてんだが?
これって入り口を見張ってるのか?
何匹かのネズミがガンラに捕獲されたのを見たんだがな。
あれさぁ、ガンラと目が合わなくても幻惑されてんよ。
どうやらガンラ前方へ、幻惑の魔術が放たれているみたいなんだわ。
だからさ、絶対にガンラの前方へ行ってはならないって訳だ。
だがなぁ。
洞窟前のガンラはさ、洞窟入り口を背にして、四方を監視してんだよ。
洞窟へ辿り着いたら、ガンラに幻惑されることは無いだろう。
だが、そこへ向かうのが厳し過ぎるわっ!
ガンラは魔法生物でな、空中のマナを吸収できれば停止することはない。
ゴーレムと同じ無機物とも言える。
だから感情なども無く、ただ、ひたすらに見張りをな。
移動することを期待しても無理だろう。
これ、どうすれば良いんだよっ!
思わず頭を抱える俺だった。




