激闘?亜人討伐!なにそれ、美味しいの?エピソード11
それから俺はリーダーと共に、陽光の里へと。
この里は、東の遠国である曙国からの移住者にて構成される里だ。
この国が興る以前には、既に存在していた里であり、国からも自治を認められているらしい。
そもそも里の主家たる東明寺家は、曙国の貴族だったらしい。
政争に敗れ脱国し、この地へ流れ着いたのだとか。
東明寺家は陰陽師と言われる者達であり、特殊な術を使うらしい。
配下として侍の志摩家と忍びの物部家を従えているんだ。
爺ちゃんは物部家の者だな。
他にも、東からこの地へ流れ着く間に、東明寺家へ下り配下となった者達の末裔もいるぞ。
東方の不思議な業を使う家が多く、彼方から持ち込んだ特殊な食文化も根付いている。
亜空間で食べた米や味噌、醤油なども、この里にはある。
あるんだが…亜空間の物ほど美味くは無いがな。
さて、そんな里だが…
領都から北西の山の中…いや、谷?
うん、渓谷と言った方が良いかな。
その中腹に、不自然に出来た盆地。
そこに存在してんだよな。
いやさぁ、この盆地、絶対に人の手で造っただろ?
とてもでは無いが、自然に出来たとは思えんのだが。
里には湖があり、溜池も存在する。
水が豊かな地であり、自然も豊か。
そして、この盆地から流れ出る水が滝になっててな。
この滝裏へ盆地へ続く洞窟があり、そこ以外では辿り着けない。
洞窟へは、様々な石像が鎮座しているんだが…
この石仏てぇらしいヤツさ、所謂、ゴーレムだ。
招かれぬ客と判断されたら襲われるからな。
まぁ、途中の台座へ里から渡された割符を嵌め、それを持参すれば問題ない。
そうでなければ、無事には通れないだろう。
「ふぅ。
なぁ、ダイル。
お前なぁ、何があった?」
いや、リーダー?
いきなり何言っとん?
「なんですか、唐突に?」
意味分からんぞっと。
「いやいや、可笑しいだろ!
なんで、普通に俺へ着いて来れてる?
採掘依頼へ出向く前は、着いて来れんかっただろうに。
明らかに可笑しいだろーがっ!」
いやいや、そがぁに興奮しなさんなって。
「単なる成長期ですよ?
良く言うじゃないですか。
〔男子三日会わざれば刮目して見よ〕って」
俺が告げるとな。
「確かに3日以上は会って無かったな。
それでかぁ。
って!
納得できるかぁ、ボケェ!」
ふむ、納得してくれないようだ。
そんな話しをしながらも、歩みを止めない。
止めないが…
唐突に、俺たちは立ち止まる。
誰かが来たみたいだな。
「なにやら騒がしいと思えば…
お前達か。
何しに来よった、ヒョッコ共」
いやいや。
そう言うアンタは、どうなんだよ。
ここさぁ、アンタの棲家じゃねぇだろ?
「なんで、此処へ居られるんですか?
クランマスター」
そう。
リーダーが告げた通り、俺たちクランのマスターである、ラグバル老だった。
「ほっ。
俺よぉ、碁敵の甚内と碁打ちに来とる。
数日に一度は通っとるでな」
あ、そうなんだ。
ちなみに甚内って、東明寺家の先代様ね。
化け物みたいな強さだって話しだ。
まぁ、目の前の爺いもだがなっ!