【鬼の場合】と【カウガールの場合】
若干のセンシティブな表現、グロテスクな効果音があります。苦手な方は気をつけて。
【鬼の場合】
「父上、そろそろ選定の時期ですね...。」
「ああ。」
月光がワイングラスに反射する。父上の鋭い目がグラスに写り、こちらを見ているようで落ち着かない。
吸血鬼族なのに血が飲めなくなって100年近く経つ。愚弟のせいで誇り高き鬼族ダーツ家は、泥を被ることとなった。父上が今回の星戦に選ばれれば、我が一族は返り咲くことが出来る。
「はあぁ...、また、血液の芳醇な香りを楽しむことができるのですね!あの血の滴り、喉を潤す快感が忘れられませんっ!なのに、愚弟はそんな事も分からないとは...。そして下民共は!魔獣から守ってやる代わりとして血の献上だけで十分に暮らせる様になるのに、それ以上を望むなどなんと贅沢なことか...。」
理解できない。と、ついため息を漏らしてしまった。父上の方がどれだけ待ち望んでいたかというのに...。
「ゴルドよ。あまり弟のことを悪く言うな。星にとって魅力的な願いと判断されなかっただけの事。今回の星戦で私が勝てば良い。」
「はっ。失礼致しました、父上。」
やはり、親というものは子が可愛いものなのだろうか。不満に思いつつも頭を下げる。
カシャン。
頭をあげようとした時グラスが割れた。
「父上っ...!?」
父上は呻き、泡を吐きながら自分の胸を掻きむしり、助けを求めるよう左手をこちらに伸ばしてきた。
手を握る。
「あぁ...、父上。星に選ばれたのですね。お戻りをお待ちしております。」
不敬な事だが、涙を流し、もがき苦しむ姿は...
やはり美しい。
ーーーーー
【カウガールの場合】
Hey☆(腰に手を当て目元でピース☆)
「ワたしは、素敵なお姉さん。ムッカさんでーす!
モストロムッカ。ご存知デスかぁ?
まぁ、知らなくてもノープロブレム!大丈夫!
すぐに終わりにしまーす!」
怯えて小さくなっている男に対して、ハイテンションで自己紹介なんて正気じゃない。頭おかしい!逃げろ!
しかもなんだ、あのポーズに大斧は!頭おかしい!!
変なものに狙われちまった…。
確かに、薬とかタバコを売ってたけどよぉ。みんなやってる事だろ!?なんで俺なんだよぉ...!
急な浮遊感。捕まっちまった...。
「ひいいいいいぃぃぃぃ...!」
「...意外と足速いのネ?ある人からアナタに殺しの依頼が入りました。首が欲しいので斬りますネ。」
「まてよ!なんで俺なんだよぉ!」
「売ってはいけないヒトに薬を売ってしまったのよ。不幸だったわネ。それじゃ、サヨナラデース☆」
「イヤぁ...がっっ...」
「ワたしの、もうひとつの武器を頭に押し付けて上げたんだから、少しはいい思いできたわよネっ☆」
依頼主の元へ向かい報酬を貰う。帰って寝て、朝になったら依頼をこなす。繰り返し。
楽しいけど愉しくない。もっと刺激的なことがしたい。
あれ?足が痛い斧が持てない。なんか体が、おかしいデス。
(そういえば、モストロムッカって聞いた事あったな...。怪物の...雌牛?だったっけな。確かにデカかったな☆)