みかちゃんの大切なおともだち
みかちゃんとうさぎのぴょん太はとっても仲良し。
何をするにもどこに行くのも、いつでも一緒です。
二人が出会ったのは、みかちゃんが赤ちゃんのころ。
小さな手で初めてぴょん太にさわった時は、とてもびっくりしていたけれど、
どんなにみかちゃんが泣いていても、となりにぴょん太をおくとぴたりと泣きやんで、ケラケラと笑うのでした。
それからというもの、みかちゃんとぴょん太はいつでも一緒。
ごはんを食べる時も、おでかけする時も、いつもとなりにぴょん太がいます。
みかちゃんはぴょん太の耳を持って引きずって歩くので、真っ白なぴょん太はいつの間にかよごれてしまったけれど。
みかちゃんもぴょん太もいつもニコニコ笑っていたね。
小学校に行くようになっても、みかちゃんはぴょん太と一緒です。
お母さんにたのんでポシェットを作ってもらい、ぴょん太を連れて一緒に登校します。
ぴょん太は初めて見る景色にきょうみしんしん。
みかちゃんは「これはチューリップっていうのよ」「あっちはちょうちょさん!」と得意げに教えてあげました。
ある日、クラスの男の子が言いました。
「みかちゃん、いつもぬいぐるみといて変なの!」
「ぼくはとっくにそつぎょうしたもんね!」
みかちゃんはとても悲しくなりました。
「ぴょん太は大切なおともだちだもん! 何がいけないの!?」
泣いて帰って来たみかちゃんにお母さんはそんなことないよと言ってくれたけれど、涙が止まりません。
そつぎょうってなあに? ぴょん太はとってもいい子だよ? 一緒にいちゃだめなの?
みかちゃんはその夜、いつも以上にぎゅっとぴょん太を抱きしめて眠りました。
みかちゃん、みかちゃん。
どこかから声が聞こえます。
みかちゃんが起き上がると、あたり一面に広がるお星さま。
手を伸ばしたらつかめそうなほどたくさんで、ぽかんと口を開けたみかちゃんのパジャマがちょんちょんと引っぱられます。
ふりむくと、ぴょん太が耳をパタパタさせて見上げていました。
「ぴょん太?」
「うん! こうしておしゃべりするのは初めてだね、みかちゃん」
みかちゃんはとってもうれしくなりました。
けれど、今日のことを思い出してすぐにしょんぼりしてしまいました。
「わたしはぴょん太と一緒にいたらだめなのかな」
ぴょん太はみかちゃんの手をにぎって言いました。
「そんなことないよ。ぼくは、みかちゃんがおともだちって言ってくれてすごくうれしかったよ」
でもね、とぴょん太はもう片方の手を重ねます。
「みかちゃんが大きくなったら、ぼくはそつぎょうしてもいいと思っているんだ」
「なんでぴょん太までそんなこと言うの!」
みかちゃんはわぁっと泣き出しました。
ぴょん太はみかちゃんのかたに飛び乗ると、せいいっぱい手を伸ばします。
そして、ぽんぽんとみかちゃんの頭をなでて言いました。
「だって、それだけみかちゃんに大切な人が出来たってことだから」
「大切な人?」
「そう。お父さんとお母さんは好き?」
「うん。大好きだよ」
「学校の子は?」
「おとなりの席のきょうこちゃんは大好き」
「そうやって大切な人がふえていくと、ぼくがそばにいなくても、みかちゃんは大丈夫になっていくんだ」
みかちゃんはこてんと首をかたむけます。
ぴょん太は笑って
「今はわからないかもしれないけれど、いずれその時が来たら、みかちゃんのしたいようにすればいいからね」
みかちゃんはしばらくぴょん太を見つめていましたが、やがて涙をぐいっと拭くと
「わたしはぴょん太が大好き。だからずっと一緒だよ!」
と力いっぱいぴょん太を抱きしめました。
ぴょん太は最初はキョトンとしていたけれど、やがて赤い目に涙をためて大きな声でこたえました。
「ありがとう! ぼくもみかちゃんがずっと大好きだよ!」
みかちゃんとぴょん太はお星さまの中に飛びこみました。
でも大丈夫。手をしっかりつないでいるので、はなれることはありません。
二人は笑いあって、いつまでもお空を飛び続けました。
次の日、みかちゃんは目を覚ますと、いつも通りぴょん太を連れて学校に行きました。
少し怖かったけれど、クラスの男の子もあやまってくれて、ぴょん太をなでてくれました。
「ぴょん太、みんなわかってくれたよ!」
みかちゃんがほっとしていると、仲直りできてよかったね、と声が聞こえた気がして、みかちゃんはますますうれしくなったのでした。
* * *
あれからずいぶんたって、ぴょん太は今もみかちゃんと一緒にいます。
みかちゃんには大切な人がたくさんできたけど、あの時言った通り、ぴょん太とずっと一緒にいてくれました。
そして今、ぴょん太の目の前にいるのはみかちゃんにそっくりな小さな女の子。
みかちゃんは、優しい顔で女の子を見つめます。
そして、そっとぴょん太を抱き上げて言いました。
「お母さんのおともだちで、うさぎのぴょん太っていうの。仲良くしてくれる?」
「うん! ぴょん太、よろしくね!」
伸ばされた小さな手に、ぴょん太はよろしくね! といきおいよく飛びこみました。