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テーマ詩集:天体望遠鏡

流星群

作者: 歌川 詩季

 恒星が降らないのは知ってます(笑)

 群れて()ちる おまえらの美しさに

 ため息をつく連中には 見向きもされないだろうが

 そんなの べつにかまわない

 一蓮托生(いちれんたくしょう)(うた)って 散りどきを示しあわせるなんて

 馬鹿げた なかよしこよしだって

 そう おもわないか?


 おれが地に()ちるときは ひとりきりでいい

 それまでは この夜空にしがみついてやる

 ほかの星がぜんぶ地に()ちて

 暗がりのひとりぼっちになっても

 それでもおれは この夜空にしがみついてやるんだ



 天の河が()ちるときは

 世界をのみこむ大洪水みたいだなんて

 そりゃ 荘厳な光景だろうさ


 満月が()ちるときは

 世界のおわりみたいな騒ぎになって

 金持ちはシェルターに(こも)るだろうし

 都会では いったいどこに逃げるつもりなのか

 わからない車たちで 渋滞になるのだろう

 クラクションが そこらじゅうで鳴り響いて

 あぁ うるせえ!!


 そんなありさまを

 低予算のパニック映画でも()るように

 おれは 暗がりのひとりぼっちで みおろしてやるんだ


 こんどは (さそり)座の朱い一等星(アンタレス)

 こっちじゃ 北天の柄杓(ひしゃく)

 しまいにゃ 織姫(ベガ)彦星(アルタイル)

 デネブをまきぞえにして 三角心中しちまってら


 88の星座がぜんぶ流れ()ちて

 太陽のとおりみちから

 ライオンもケンタウロスもいなくなったら

 あしたから日輪はうまいこと ころがっていけるんだか

 心配になるんだろうが

 おれの知ったこっちゃねえな



 でも まだだ

 まだおれは 流れ()ちてやらねえ

 この夜空にしがみついてやる

 おれが()ちるなら

 そのときは ひとりきりがいい


 手をひこうとしないでくれ

 手まねきなんかしないでくれ

 手をふって さよならと かってに流れていってくれ


 おまえらみんな 全天の流星群が すべて流れ()ちて

 暗がりのひとりぼっちになっても

 おれは孤独に(さいな)まれたりしない

 おれが()ちるのは ちから尽きたときだけだ

 それまでは たったひとりの一番星になったって

 この夜空にしがみついてやる



 もし それが叶わなずに

 おまえらといっしょに流れ()ちることになっても

 おれは流星群のひとつじゃあない

 たったひとつの 孤独な輝きをもつ流れ星だ


 願わくば せめて おまえたちとはちがう地に

 ひと知れず()ちて 燃え尽きたい

 プラネタリウム行きたい!


 眠らないぞ!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 星のかけらのそのまたかけらが宇宙全体に 生き様を挑んでいる、問うている感じの気概を 感じました。 近くにブラックホールがあれば、それにも挑みそうです。 [一言] 先生、眠りますって、プラネ…
[一言]  たとえ望みが叶わなくても。望んだシチュエーションではなくても。  それでも在り方は諦めない。  群れの中でも己を貫く、孤高の光が眩しいです。
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