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坂本梧朗詩集  作者: 坂本梧朗
Ⅳ 第四詩集『蟻と土』     1997年刊

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93/133

その29 物と心

空腹な十人の前に

パンが一つしかないなら

十人の心は

穏やかではあるまい

物の豊かさと

心の豊かさは

相伴う


物の豊かさが

心を貧しくした

というような議論が

大手を振って通用するのは

なぜだろう


過労死するほど働いて

国民一人当たりのGNPは

世界一位になったというのに

我々の心が       

貧しいままだと言うのなら


実は「物」も貧しいのではないか

国家予算や企業の収益の話はともかく

我々の暮らしの実際において


住居

賃金・家計

労働時間

生活環境

健康・老後

社会保障

…


言われるほど

「物」は豊かか



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