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その9 接近 (2)中央卸売市場
北九州市中央卸売市場
その文字が屋根〳の上に見えてから
その下に到達するまでの
長い時間
潮の香りだ
扁平なコンクリートの大地の上に
扁平に建てられた市場
その宏大な広がりの故に
ここではすべてが遠近法なのだ
土曜日の午後の
市場の静かさ
人の声と
物と物とがぶつかる音が
時折
遠くの方で発せられ
コンクリートと鉄骨の間を
幾度も幾度もはね返りながら
伝わってくる
みかんの箱や玉ネギの袋を
積んだり、降ろしたりしている
残された静かな人々
柔らかに吹き抜ける
海からの風