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その25 賃労働 偏差値の繭
賃労働
資本の鏨に
ガッシガッシと削られる
生命の玉
削り屑の粉粒を
報酬に浴びて
ガリガリと噛む
その粒々の
味気なさに
辟易している
風が吹けば
残す何ものもなく
空中に飛散する
かっての生命たち
偏差値の繭
受験勉強で締め上げられていた
高校生の頃
他人との間に
透明な薄膜を感じていた
人間ばかりではなかった
外界の事象一般との間に
もどかしい薄膜があった
破りたいと
歯がみしながら そのくせ
その向こう側に在るものに
触れることが怖くて
内側に留まっていた
私の胞衣
眼鏡をかけた小学生が
黙々と塾に急ぐ
乾いた薄明るい繭の中で
「成人」を迎える人間が
増えていく




