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その24 葉の上で 人類の一種
葉の上で
芋虫が蠢いている
朽ちかけた樹の
一枚の葉の上で
芋虫は知っている
己の正義と快楽
這っている葉の組成
本体の樹の発生と終滅の過程
芋虫にはわからない
隣で同じ葉を食べている
同じ芋虫の心情が
そいつが不意に
攻撃を加えてくる理由が
だから芋虫は
依然として芋虫のままで
蠢いている
人類の一種
澄んだ瞳と
善良な気質が
そこに立っている
ほこほこと
肩の線が丸い
人の好い笑顔を浮かべて
ゆったりと歩いてくる
抜けている
と言うのか
目端が利いて
抜け目がない
それがそれほど上等か
どうか
殺さないでくれ
この種を
人の世の
住み良さのため




