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その23 轟音 片目の神
轟音
――文化祭で
音楽?
いや
これは轟音
コンピューターで
ぴっちり ムダなく
効率を弾き出す現代
微妙な心の揺れも
数音節のきまり文句で
片付けなければならない君達
人生は
スタート前から
ゴールが見えているようで
きっちりした二者択一を
せかせか迫られ続ける青春は
断ち切られるタコ足から
赤い轟音ぽたぽた
片目の神
宇宙の始原のその前
宇宙の終極のその後
10のマイナス13乗㎝以下のクォークから
一○○億光年の広がりまで
自然についての人間の知見は
神の域に近づいた
ところで
社会について
人間の知見は
どれだけ進歩したのか
戦争は
貧困は
差別は
絶えることのない不正や腐敗は
依然として
「どうしようもない人間の本性」
なのか
一方が跳ね上がったままの天秤皿
塞がれていないか
〈神〉の片目は




