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坂本梧朗詩集  作者: 坂本梧朗
Ⅳ 第四詩集『蟻と土』     1997年刊

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74/133

その10 気持ち   犬

   気持ち


いつもより

二時間遅くなった

勤め帰り


乗換えの駅に着くと

接続まで三十分


夜の闇に消えていく時間を

じっと見送ってはいられない


少しでも自宅(いえ)に向かって

近づいていたい


バス停まで歩きながら

〈結局、列車の方が早いのではないか

すぐにバスが来たとしても同じになる〉

確かにその通りなのだが


バスは十五分後に来て

やはり列車より遅くなった


ほとんどの行為が

気持ちを済ますためのもので

目的を果たすためではない




   犬

               

おう

そう言えば

犬がいた


あの犬は

優しい目をしていた


ちょうど人が

知人を認めた時のように

顎を上げたので

片手を上げて応えた

犬はゆるやかに尾を振った

穏やかな表情だった


しばらく歩いて     

振り返ると

おっというように

犬も視線を戻した


曲がり角で

もう一度振り返ると

お前は目が離せない

というように

大丈夫

というように

奴はまだ私を見つめていた
















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