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坂本梧朗詩集  作者: 坂本梧朗
Ⅳ 第四詩集『蟻と土』     1997年刊
72/133

その8 網の目

定期を落とした

半年の定期で

半分しか使ってなかった


女房には秘密にした

自分が嫌悪された


風呂に入って考えた

明日になれば  

拾った人から連絡が入るかも

人間は信ずべき存在では

〈そんなことあるはずがない〉

という囁きを聞きながら


翌朝出勤すると

落とした定期が

机の上に置いてあった


不思議なものを見るように

何度もそれを眺めた 

得をしたような

充実した気分になった


その日は一日幸福だった


それから九日して

今度は財布を落とした

同じ駅のホームに  


現金の入っているものだから

今度こそは観念した


腹立ちまぎれに

駅に問合わせると

財布は届けられていた


人間の善意の網の目に

定期と財布は落ち

すくい上げられてきた


私の迂闊さについては

何をか言わんやだが







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