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その3 父逝く 未知
父逝く
文句を言わず
ソファーに座っていた
テレビで野球を見ていた
ラジオ中継のイヤホーンも
耳に入れて
話しかけると
ポツポツと応じた
呂律が少し回らなかった
目に力がなかった
(視力は既に害われていた)
諦めていたのだろう
息子のものわかりのなさを
背後の書棚も
そのままなのに
ソファーの上には
毛皮があるだけ
(初七日に)
未知
駅から出て
ふと道筋を変えてみる
この道はどんな道かと
方向は同じだから
しばらく歩くと
行き止まり
戻らねばならなかった
腐ることはない
見たではないか
それなりに未知を




