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坂本梧朗詩集  作者: 坂本梧朗
Ⅲ 第三詩集『Recall Buddha』       1990年刊
62/133

その15 感懐   科学的社会主義を讃える

   感懐


言わなくても

わかるべきこと

と黙っている


それを弱いと思う

あるいは

攻撃を続けることが

最大の防御と感じる

ので

やめずに押してくる

控えずに攻めてくる


と、やはり弱いので

キバを剥く

自分をまもること

と思って


こうして

くり返している

動物であること




   科学的社会主義を讃える


それは現実を認識する

変革するために


それは頑強に拒否する

不平等を

支配と被支配を

動物の尾をひきずることを


それは根絶を決意する

人間同士の敵対的生存を

そして人間を獣に押し止める根源を

経済的土台に見出したのだ

それは土台の変革を目指す


それは真にユニークだ

否定するために肯定する

現実のなかでだけ夢を追う


その視線は

「人間に関するあらゆること」

に注がれるが

視座は常に未来にある

その理想はいまだ実現されておらず

それは本質的に未来に属する


それは現実の具体的な分析のなかで

理想への道筋を探る

正常な人間なら

誰でもそうするように

 (車で目的地に向かう場合でも

  我々が指針とするのは

  現実を写した地図であり

  頭の中の観念ではない)


それは現実を反映して

現実とともに発展しており

古くなることが

本性上できない


それは唾棄する

現実から遊離した観念であることを

にもかかわらず

その理想は

人間の至福に関する

凡庸な宗教家や思想家の

あらゆる観念の総和よりも

豊富で熱い


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