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その5 願い 貧乏ゆすり 雨
願い
言ってもわからぬ言葉のために
何を言うべきかわからぬ心のために
絶えず生起する憎悪のために
冷たい眼のために
素知らぬ身振りのために
朽ちた能力のために
失った人生のために
突然の自殺のために
不意の他殺のために
人間が人間になれぬために
資本主義の廃絶を
私は願う
貧乏ゆすり
貧乏ゆすり とは
それをしている様な
人間の状態では
豊富さ というものに
決して出会う事がない
ということを見通して
言われた言葉だ
雨
雨が降ると
路も
家並も
歩く人も
存在を
したたり濡らし
手触りできる
立体となる
樹々の緑は
緑を極めようと
息を詰める
動きは席を譲り
在ることの静かさが
風景を領する
今
在るものは
在り様を
吟味するのだ
雨は白く降り続け
それらのものを
釘付けにする