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その1 青春
懐かしい曲がかかって
僕が他人の幸福と
自分の幸福とを
金貨の裏表のように
重ね合わすことができた時代に
流行っていた曲で
あの頃の僕は
新型の爆弾だった
触れた者は
原形を保てなかった
僕の内部の一カケラで
ビートたけしぐらいなら四、五人
つくれたと思うよ
煌めく鴨川
市電の青白く光るレール
下宿までの夜空に
語り続けた夢
僕のなかには
世界への愛があふれていた
つつけば
頬をつたい落ちるほど
僕は感じていた
世界は自分を欲していると
三日後に
久しぶりに向き合う
愛しい人を思うときの
心のふるえ
と同じくらい確かに




