46/133
その18 忍耐 診察
忍耐
彼は黙って
頬に手を当て
見たくもないものを
見ていました
時が過ぎていきました
その姿は端麗で
一生をその姿勢で過ごせたならと
思われました
彼の目の前を
泡立つ時が過ぎていきました
過ぎていく時こそ
彼の力でした
診察
あの顔の下にも
ぴくぴくと動く
心臓がぶらさがっていて
顔が遭う風景に
ひくひくと反応している
あの胸の逞しい男も
太い首を走る管の先に
濡れた心臓がぶらさがっていて
ビクビクと震えている
ぶらさがった心臓は
遭遇する景色に
脅かされたり
怯えたり
締めつけられたりしながら
その鼓動を止めようとする
プレッシャーに抵抗して
肥大する
レントゲン写真の中央に
白く肥大している心臓
デリケートな筋肉の袋が
記録していた履歴




