表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
坂本梧朗詩集  作者: 坂本梧朗
Ⅱ 第二詩集『彷徨』     1985年刊
45/133

その17 サンルーム

わかるよ

あんたのまっとおに生きたいって気持ちは


軽くうなずくなよ!


ほら、ここに座っているとさ

陽がさしてる

前はガラスだ

花瓶なんか二つあって へへ

ウェイトレスに訊いてみようか

これは生花ですか?

ほらとまどっちゃって

なあんにも知らねえんだ


前にはグリーンの芝生さ

目えつむって

想像しなよ

大きく息をしなよ

広々とした芝生に寝転がって

青い空を眺める

()()()さ!

せせら笑っていいのかよ

死んじまえ!


あんた何が欲しいんだ

けっこう恵まれてるじゃんか


かなしいかい?

俺なんか

あんたみたいな余裕ないもんね


許さないんだよ

オレがオレを

そうさ それだけさ


ここはさ 陽がさして

ちょっとしたサンルームだな


かぜが

風はさ

通り抜けていくだけだよ

とりこぼすさ

それはさ

だけど

風は吹いて

しっかり

ほら、あのテント

工事現場のテントを

吹きあげていくじゃないか

それで

たくさんだよ


このまま年とって

死んじまいなよ あんた


あそこのアパートだよ

窓にタオルとパンツと

あれは足袋だな

ぶらさがってる

三メートル先はコンクリートの壁さ

六畳の湿っぽい部屋の中で

空見ながらマスかいたな

谷間の底から見る空は

うすどんよりひかってた


俺はこれから女に会うんだ

六時だよ

そわそわしちゃって

四時にアパートにひきあげてきて

なにすりゃいいかわからない

風呂に入って

いい匂いなんかさせたいけど

その前にちょっと寝て

力たくわえておこうなんて考えたり

とにかくあいつは仕留めてみせる

絶対に


先のことは何も見えない

いいじゃないか

今はあいつののけぞった体と

よがり声しかうかばない へへ

たび? ああ足袋

姉ちゃんの足袋だよ

早く店に行けって言ったんだ

早く男に抱かれてこい! へへ


俺は落ち着かないんだ

なんで呼びだしたりするんだよ

陽の明るいうちから飲んだくれて

こんな

きたねえアパートの見えるサテンに

女がほしいのかい

紹介してやるよ

あんたには

ラーメン一杯の借りがあるってわけだ

あの時はやばかったな


夢?

うん、マーキュリーをぶっとばして

山から

あの望玄荘のところから

見渡す夜景を全部

俺のものにしたい なんて


じゃ

俺いくよ


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ