その17 サンルーム
わかるよ
あんたのまっとおに生きたいって気持ちは
軽くうなずくなよ!
ほら、ここに座っているとさ
陽がさしてる
前はガラスだ
花瓶なんか二つあって へへ
ウェイトレスに訊いてみようか
これは生花ですか?
ほらとまどっちゃって
なあんにも知らねえんだ
前にはグリーンの芝生さ
目えつむって
想像しなよ
大きく息をしなよ
広々とした芝生に寝転がって
青い空を眺める
てんとちさ!
せせら笑っていいのかよ
死んじまえ!
あんた何が欲しいんだ
けっこう恵まれてるじゃんか
かなしいかい?
俺なんか
あんたみたいな余裕ないもんね
許さないんだよ
オレがオレを
そうさ それだけさ
ここはさ 陽がさして
ちょっとしたサンルームだな
かぜが
風はさ
通り抜けていくだけだよ
とりこぼすさ
それはさ
だけど
風は吹いて
しっかり
ほら、あのテント
工事現場のテントを
吹きあげていくじゃないか
それで
たくさんだよ
このまま年とって
死んじまいなよ あんた
あそこのアパートだよ
窓にタオルとパンツと
あれは足袋だな
ぶらさがってる
三メートル先はコンクリートの壁さ
六畳の湿っぽい部屋の中で
空見ながらマスかいたな
谷間の底から見る空は
うすどんよりひかってた
俺はこれから女に会うんだ
六時だよ
そわそわしちゃって
四時にアパートにひきあげてきて
なにすりゃいいかわからない
風呂に入って
いい匂いなんかさせたいけど
その前にちょっと寝て
力たくわえておこうなんて考えたり
とにかくあいつは仕留めてみせる
絶対に
先のことは何も見えない
いいじゃないか
今はあいつののけぞった体と
よがり声しかうかばない へへ
たび? ああ足袋
姉ちゃんの足袋だよ
早く店に行けって言ったんだ
早く男に抱かれてこい! へへ
俺は落ち着かないんだ
なんで呼びだしたりするんだよ
陽の明るいうちから飲んだくれて
こんな
きたねえアパートの見えるサテンに
女がほしいのかい
紹介してやるよ
あんたには
ラーメン一杯の借りがあるってわけだ
あの時はやばかったな
夢?
うん、マーキュリーをぶっとばして
山から
あの望玄荘のところから
見渡す夜景を全部
俺のものにしたい なんて
じゃ
俺いくよ




