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その15 通夜
横になったとき
あの人はよく
自分の頭の下に
私の手を引き入れて
持ち上げてみろ
と言いました
重い と言うと
重いだろう
と頷くのでした
寝たままの片手では
うまく上がりませんので
起き上がって
両手で持ち上げてやると
気持ちいい と
目を閉じました
眠りたいのに
この頭が
回転を止めない
そんなことを
言っておりました
明かりを消して二時間ほど経つのに
大きな溜息をつき
寝返りを打つのです
私の体が少しでも触れると
ビクンとしたりして
そんな夜が
ひと月ばかり続きまして
利己的な人です
自分のことしか考えないで




